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ほんの45分程度の散策ですが、ここからが世話役の出番です。つまり、迷子や怪我人が出ないように、まるでシェパードのように、付かず離れず、団体の全体に目を光らせなければなりません。やはり、参加者の皆さんはそれぞれに個性があって、興味を引かれるところが、それぞれ違います。世話役としては、ゆっくり歩きながら、あの辺にひとり、こっちには3人、などと声を出さずに心の中で追跡を開始しました。

45分後、もとの集合場所に再集合です。水槽の中の金魚を数える調子で、イチ、ニイ、サン、シイ、、、はいっ、これで全員揃いました!それでは、バスの方へ異動しましょう!ちょっと、待ってください。ひとり足りません!あっ、数え間違いでした!と、いうような調子で、とりあえずバスまで戻って、バスガイドさんが、

「隣のひとは、チャンと座ってますか?」

と、確認してくれるまでは落ち着きませんでした。不思議なもので、朝出発の時にバスの座席の何処に座るかということは、好み半分、偶然半分で決まると思いますが、一度座ると、その座り方は1日中ほぼ変化しません。これは、洋の東西を問わず、真理のようです。そうである限り、このバスガイドさんの確認方法が一番確実であることに気付きました。

さあ、次は昼食です。バスの中でガイドさんが、「ひところ日本で流行った小説があります。この小説は、日経新聞というかなり硬い新聞に連載されたもので、当時、サラリーマンは争うように駅の売店で買い求めたそうです。その物語は…」と、説明を始めました。そう、「失楽園」の話です。

「…そして、その主人公達が最後に食事をした場所が、これから行く鎌倉プリンスというホテルです。皆さんも、これからそこへ行くのです。」

「今、見えた小さな電車は、江の電といいます。日本でも僅かしか残っていない路面電車です…」と、話題には事欠きません。

さて、昼食も無事終わり、次は高徳院に行きました。例の大仏さまがいらっしゃるところです。その次が長谷寺でした。午後も午前中と同様、見所を説明した後、集合時間と場所を確認して解散しました。世話役としても多少の慣れが出てきたのか、全体に気を配りながらも、自分の好みで散策ルートを自由に歩ける時間が少し出てきました。行く先々でレディースプログラムのメンバーに出会うと、「あそこ見ましたか?おや、まだですか。是非、行ってみて下さい。」とか、「いやー、いいですね、この風景は。」などと片言の英語で話をしては、迷っているひとはいないかななどと気を揉んだりしたりしました。

鎌倉には見所がもっとたくさんあると思いますが、やはり、東京からの日帰り団体旅行としては、3ヶ所くらいが限度と思われました。皆さん、お元気な顔をして無事にバスに戻りましたが、それでも自分でも気付かない程度には疲れているようでした。帰りのバスでは、これまでと打って変わって、バスガイドさんは控えめでした。「それでは、これから東京に向いますが、途中渋滞で多少の延着が予想されます。今から熱いお茶をいれますので、皆さんは、ゆっくり寛いで居眠りするのもよいかもしれません。」と、いった調子です。その言葉に誘われて、お茶を戴いた後、居眠りに入ったひともかなりいました。そういう私も、そのひとりでした。「もう着きますよ。」と起こされた時に、もう少し渋滞していてくれれば良かったのにと、感じたのは私ひとりではなかったと思いました。

 

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このように、ツボを押さえたサービスをしてくれたバスガイドさんのお陰で、楽しいレディースプログラムの第2日も終わりました。今回は、バスガイドさんの話ばかりに終始しましたが、参加者全員が怪我もせず安全に、迷子にもならずに戻れたのも、そして当日の天気がツアー日和に恵まれたのも、関係者や世話役の皆さんのお陰だと感謝いたします。

さて最後に、参加者のある方から戴いたご意見で、次回の企画に是非参考にすべきだと思われた話を記録しておきます。

それは、出発時間に関することです。ホテル玄関に午前9時前の集合というのは、ホテルに滞在しているひとを除いて、サラリーマンではない奥様方にとって、非常に早いということです。最悪、前日からホテルに泊まって参加せざるを得ない方がいらっしゃる可能性もあります。もし、10時くらいの出発であれば、当日の行動半径はかなり狭まるかもしれませんが、参加できる方がもっと増えるのではないでしょうか、というご意見でした。

 

 

 

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