当日、まあまあの空模様、8:05ほぼ定刻、バスは日本都市センター会館前を出発、一路山梨県のリニア実験センターに向かう。紅葉まだらな中央自動車道を快走、談合坂S・Aで小休憩ののち大月I・Cで一般道にはいって予定より早めに実験センターに到着。浮上式鉄道開発本部の長谷川氏が笑顔で出迎えてくれる。長谷川氏には、以後鉄道総合技術研究所の見学までバスに同乗同行していただき大変お世話になった。
長谷川氏の案内で、超電導リニアモーターのからくりから開発の歴史をまとめた20分程度のビデオを見せて頂いたあと、展示館、軌道と乗降プラットホームを見学した。しかし、実験車両とその走行状況は、訪問日の一週間車両の計画整備ということで、残念ながら見学できなかった。このことは予め承知はしていたものの参加者には説明が行き届いていなく不満の声を頂戴してしまった。次ぎの機会の反省点である。
リニア実験センターは富士山山麓帯につながる風光明媚な山間地にある(実験線の80%はトンネル)。富士山はどこかと外国人に問われるが、本日はかすみ雲に隠れて姿を見せず、つたない語学力で説明に苦心する。10日ほど前、中国の朱首相がこの地に参観に訪れているが、この時はくっきりと雄大な姿を見せていたとのことで残念なことであった。
11:30実験センター出発、レストラン“風”で昼食となる。レストランはワイン用のブドウ畑の真ん中にあった。ドイツからの参加者の‘oh!my hometown’の一言が合図かのようにようやく隣どうしの会話がすすむ。1時間の昼食休憩後、予定より少し遅れて勝沼のメルシャン・ワイナリーに到着、ワイン製造ラインの見学となった。ここでもさすが本場ドイツ、数10種類の試飲ワインを片っ端から賞味をはじめた。出発時刻で乗車を促すまでグラスを離さない。結局、ワインの評価は‘甘すぎて自分には合わない’とのことであった。
14:00ワイナリー出発、勝沼I・Cから中央自動車道に入り国立府中I・C経由、予定より15分早めの15:25、鉄道総合技術研究所(国分寺市光町)に到着。情報・国際部部長荻野隆彦氏の出迎えを受ける。
(財)鉄道総合技術研究所は1986年設立、国鉄の民営化に伴い研究・開発部門を統合継承した鉄道技術の総本山である。超電導リニアモーターカーの技術開発は1990年から本格的にはじまり、7年後には山梨リニア実験線で走行試験を開始するに至っている。研究所ではその他、構造物の健全度評価法、廃有機材料リサイクルの実用化や車両ブレーキ時の運動エネルギーを電気エネルギーに変換し貯蔵再利用するシステムの実用化開発など興味深いテーマも扱われているが、時間の都合上、誘導案内システムとリニアモーターカー心臓部超電導磁石を案内して頂くことになった。構内は研究所バスで移動、見学は荻野氏に英語で説明して頂いた。
誘導案内システムは視覚障害者向けに駅構内のバリアフリー化を目指すもので、携帯装置から現在の場所を案内するほか、行きたい場所を声で指定するとそこまで誘導案内する装置である。案内端末は路面要所に埋め込まれており、携帯装置とはむろんコードレスで繋がる。女性職員が実演してみせてくれたが、移動中の情報支援装置として応用はひろいのではあるまいか。
リニアモーターカーの原理は電気磁石による誘導反発浮上方式とリニア同期電動機の組み合わせである。車両に搭載される軽量かつ強力な磁石が超電導方式で、超電導コイルはニオブ・チタン合金、コイルの極低温環境に液体ヘリウム(-269℃)が使用されている。昨年3月、運輸省実用化技術評価委員会より‘実用化に向けた技術上のめどが立った’と評価され、現在、装置の信頼性、長期耐久性や高速走行非常時の安全確保などの実証段階であるとの説明がなされた。平易な説明に加え、実際に超電導コイルを手にし極低温を封じ込める薄い断熱材を目にしてみると‘開発’のなんたるかの一端をうかがい知ることができたように思えた。