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パネル討論

Panel Discussion

 

21世紀における舶用ガスタービン(PD-3)*

PD-3 Marine Gas Turbines in the 21st Century

 

葉山眞治** 岩本敏昭***

 

1997年、国際海事機関(IMO)において、船舶からの大気汚染防止に関するMARPOL条約の新付属書が採択され、船舶からのNOx排出量規制が現実的なものとなっている。ガスタービンはNOx排出量が少なく、軽量・小型で、振動・騒音も少なく、舶用主機関として優れた原動機であるが、燃費が悪く、低質燃料の使用が困難であったため、船舶への採用は艦艇等の特殊なものに限定されていた。

近年、艦艇用のガスタービンも燃費の向上が要求され、熱効率の高いガスタービンの研究開発が米英海軍を中心に進められている。我が国でも商船用に低NOxの高効率ガスタービンの開発が進められている。ガスタービンは環境にやさしい原動機で、21世紀に向けて、舶用主機関としてますます重要な地位を占めるものと予想される。

このような状況を踏まえ、舶用ガスタービンの現状および将来の動向について、内外の著名なガスタービンメーカーがどのような見解を持ち、どのような取り組みをしているか、お互いに情報交換をするため、本パネル討論が企画され、4名のパネリストが参加した。前半の司会は葉山(富山県立大学)、後半と討論の司会は岩本(川崎重工業)が担当した。

最初のパネリストは川崎重工業の杉本隆雄氏で、「日本のガスタービンプロジェクト−SMGT」について発表があった。これは、1997年以来、国家プロジェクトとして進められている、通称スーパーマリンガスタービン(SMGT)の研究開発状況の紹介である。SMGTは、(1)低NOX(1g/kWh、ディーゼルの1/10)、(2)高効率38〜40%(高速ディーゼルと同等)、(3)A重油使用可、を目標とした2,500kW級の再生開放2軸式ガスタービンである。この目標達成のために行われた各要素研究の概要が説明された。

まず、予蒸発、予混合、希薄燃焼及び追加燃焼による低NOx燃焼器を開発し、全負荷範囲で低NOx化を実現する。続いて、軸流4段十遠心1段の高効率圧縮機、タービン入口温度を1,200℃に高めるためのガスゼネレータタービン用高性能空冷タービン翼、および排熱を回収するためのプレートフィン型再生器を開発して目標の熱効率を達成する。さらに、部分負荷での効率低下を防ぐため、軸流圧縮機およびパワータービンノズルを可変にしたV型タイプと定格点での性能を重視した固定ノズル式F型タイプの2種類のガスタービンを製作して、運転試験を行う予定であると説明された。

2番目のパネリストはゼネラルエレクトリック(GE)のD.ラック氏(元米海軍大佐)で、「舶用ガスタービンの最近のアプリケーションおよび将来動向」について発表があった。商船用としては客船用、高速フェリー用等に、LM2500+、LM2500、LM1600を用いたCOGES、CODAG、COGAGシステムが適用されている。艦艇用としては、大型化指向とは別に、ダウンサイジングの徴候が見られる。小型艦にLM2500を用いたCODAGシステムが適用されている。将来動向として、LM2500+の適用、遠隔地での故障診断、バランスのとれた動力システム(効率、乗員、排出物と騒音、ライフサイクルコスト)、サービス支援について説明された。

3番目のパネリストはロールスロイス(RR)社のM.パーカー氏で、「市場変化に対応した舶用ガスタービンの開発」ついて発表があった。艦艇市場でもライフサイクルコストが非常に重視されるようになっていることが強調された。商船市場では、経済環境の変化(E一ビジネス等)に伴い高速かつ信頼性のある輪送手段が求められ、環境対応、居住性等の面からもガスタービンが期待されている。

 

*原稿受付 平成12年12月22日

** 正会員 富山県立大学(富山県小杉町黒河5180)

*** 川崎重工業(神戸市中央区東川崎町3-1-1)

 

RR社においても、25MW級WR-21および50MW級Marine Trentが最新の航空エンジン製造基盤をべースに開発されている。WR21は中間冷却再生(ICR)サイクルガスタービンで、中間冷却器、再生器、出力タービン可変ノズルを組合せて、広い出力範囲で大幅な燃料消費率の改善が実現できる。既に開発は完了しており、実艦への搭載計画も進められている。Marine Trentはシンプルサイクルガスタービンで航空用Trent、産業用Trentをべースにしている。現在、Fastship Project(大西洋横断用大型高速貨物船)用に開発が進められていると説明された。

4番目のパネリストはプラットアンドホイットニー(P&W)社のT. ダンロップ氏で、討論に参加された。

3名のパネリスト発表後、会場フロアから、グレードの低い燃料、欧州カーフェリーの就航周期、GT定格出力の違い(艦艇用と商船用)、再生器のクリーニング、SMGTの出力拡大、NOx排出量、GTの弱点、DEからGTへ換装可能性、エンドスコープ点検、ガス燃料等について、活発な質疑応答が行われた。

 

 

 

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