1-4 山城勇人氏/S&0財団
[テーマ]:船舶用機関の寄与度と対応
S&0財団は、国内で消費される燃料油の量から精度良く船舶からの大気汚染物質排出量を推定した。本研究の成果として、日本国内における船舶からのSOx、NOx、CO2などの環境汚染物質の全体に占める寄与度は、大きい順にNOxで37%、SOxで23%、CO2で3%と無視できないレベルになってきている事を示した。さらに川崎市の船舶に対する条例(第59条:船舶を使用して、原料、製品などを出荷し、又は受け取る事業者は、船舶の運航者又はその関係者に対し、硫黄含有率の低い燃料の使用その他の船舶から排出される大気汚染物質の抑制に向けた措置の実施について要請するよう努めなければならない。)を例に、今後東京湾などの規制の可能性を示唆した。また、考えられる対応技術としては、影響度の大きい陸地に近い場所での対応技術の重要性を指摘した。そのため、船舶の停泊中の陸上電源使用義務付け、港湾内ではNOxを吸着し、通常航海時に尿素などによる還元脱硝するシステムなど、現実の船舶の使用実態に即した技術の開発が望ましいことを提案した。
2. 討論( )内は質問者
2-1 規制の将来見通しについて−(議長団)
議長団から規制の将来見通しについて、図1を示してパネリストの見解を問うた。これに対してMr.Bousseauは、現在の陸上用機関とのバランス、すでに米国が現状のIMO規制値から更に30%低い次のステップの規制を提案している事実から、本図はあまりに楽観的すぎると回答した。
2-2 乳化油使用機関の長期信頼性について−
(九州大学 高崎教授)
Mr.Pedersenから、すでに発電用陸上大型プラントで長期的に十分な実績が有ることが回答された。
2-3 対策費の負担について−
(上海海洋大学 Prof.Hu)
環境対策には、初期投資に加え、運転・保守費にも金が掛かるが、現在の船主経済はそれを許容できるほど裕福ではない。いったい誰がこの費用を支払うべきなのかとの質問に対し、Mr.Pedersenは受益者負担の原則から運賃に上乗せすべきであるとの見解を示した。
2-4 コンバインドシステムの可能性−
(SEMT Pielstick Mr.Herrmann)
沿岸海域での厳しい環境規制に対応する一方法として、沿岸海域ではクリーンな燃料を使用する小出力のガスタービンを使用し、通常航海時は大出力の粗悪油使用の大型ディーゼル機関で運行する方法も考えられるのではないかとの意見が示された。