パネル討論
Panel Discussion
船舶からの排気ガス−舶用エンジンはいかに環境にやさしく効果的か(PD-2)*
PD-2 Exhaust Gas Emission from Ships −How Marine Engines can be Environmemtally Friendly and Efficient
田山経二郎**
現在最も急速なスピードで進展しているNOx問題に関するパネルは、各分野を代表する四人のパネリストを迎え開催された。パネルの進行は、この方面で深い見識を有する英国の著名なコンサルタントK.Wilson氏、日本からは日本内燃機関連合会田山常務理事の両者により行われた。
四人のパネリストからはそれぞれの観点から、討議の土台となる意見を述べていただいた。
1. パネリストの発言内容
1-1 Mr.Pierre Bousseau/President of EUROMOT
[テーマ]:排気規制の動向
まずOff-road機関に対する排気規制の動向について、ヨーロッパのエンジンメーカーの団体であるEUROMOTの立場で規制の現状と将来見通しについて報告があった。
すなわち、現在舶用機関に対する規制として、世界的なレベルでは、まだ発効していはいないがIMOの大気汚染防止条約付属書VIがある。地域規制としては、Sweden、NorwayでNOx、SOxの排出レベルに応じた航路税、港湾税が実施されている。その他にライン河航海条約、コンスタンス湖条約などが存在する。
同氏は今後の課題として、
1) 各規制値間の整合性
2) 規制値の前広な時間軸の設定
3) 証書の共通化
4) 規制値の騒音など他の要素との関連付け
などを挙げた。
1-2 Mr.Stephen Dexter/President of CIMAC
[テーマ]:NOx低減技術の現状
引き続き、Mr.DexterがエンジンのNOx低減技術と対応見通しについて説明した。彼はNOxの各レベルに対応した確立された低減技術が既に存在し、後は政治家の決断に掛かっているとの意見を述べた。
さらに、数年前から米国の自動車用エンジンに採用が決定され、さらに欧州でも追従しようとしているOBD:on-board diagnostics(車載診断装置)の使用義務付けの重要性について強調した。すなわちエンジンが使用される長い期間にわたってNOx排出が規定値内に有ることを担保するにはこの種のシステムがどうしても必要であり、まず最初は、NOx排出に影響する各コンポーネントの設定値が危険なゾーンに入った事を記録することから始まり、将来は自動復旧システムの導入まで進むであろうとの見解を示した。
現在IMOの大気汚染防止証書再認証時の選択肢の一つになっているNOxモニタリング法は、この意昧で将来唯一の再認証法になる可能性を示唆した。
1-3 Mr.Peter Sun Pedersen/Vice President of MAN-B&W
[テーマ]:電子制御機関の可能性
先のMr.Dexter同様、エンジンのNOx低減技術はそれぞれのレベルに応じた既存の対応技術が存在していることを示した。特にB&W機関の場合は、燃料弁の構造上の改善(スライド弁)で大幅にNOx低減が可能であることを強調した。さらに大幅な低減要求に対しては、乳化油、SCR脱硝装置が対応技術として考えられるが、いずれも陸上用プラントでの長期的な実績を含め十分実用段階にあることを示した。最近各社で開発が進んでいる電子制御技術に関しては、燃料噴射率の改善で大幅なNOx低減が見込めることを示した。電子制御化により一層NOx低減のやり易さを加速した事を説明した。
*原稿受付 平成12年12月18日
**正会員 日本内燃機関連合会(港区新橋1-11-5)