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PD-12"The Role of Bunker Quality in Changing Market" B.Heron (Shell Marine Products, UK)

バンカーの品質は、石油製品の需要構成によって大きな影響を受ける。近年軽質油の需要が増大し、残さ油に対する需要が減少していて、これに対処するため石油供給側としては二次分解装置の稼働率を高めてきた。これに伴いバンカーの品質は低下傾向にある。つまり、粘度、密度、残炭分、硫黄分、灰分などが増加している。舶用バンカー油の品質は、国際的にはIS08217やCIMAC Fuel Recommendationsなどで規定されている。これらの規格は、供給できる燃料性状の変化やディーゼル機関の許容できる限度などによって変化するものであり、供給者やエンドユーザーの見通しに基づいて定期的に改訂されている。今後は地球環境の保全の見地から船舶から排出される有害物質に対する規制が掛けられるようになり、バンカー品質への制限が強化される方向にある。しかし、利益を最大限に追求するには、船主としては安全運転できるもっとも重いクラスの燃料を選ぶのがもっとも賢明である。

 

PD-13"The Need for Fuel Treatment and Possible Pitfalls "A.Pallmar (Alfa Laval Marine & Power AB, Sweden)

燃料前処理装置の使命は燃料中の不純物を除去してエンジン入り口での燃料性状を安全運転が可能な範囲に保つことである。ISOやCIMACの燃料規格に適合した燃料であっても適切な燃料処理が出来なければ、エンジン入り口での不純物のレベルが安全運転に必要なレベルを超える可能性が充分にある。燃料前処理装置の性能が優れていることは必要であるが、その他にも燃料流量に見合ったサイズの機器を選定すること、セットリングタンクを適切に使用すること、運転条件を適切に守ること、乳化を助長するするような機器の使用禁止、廃油混入燃料を避ける、装置の保守、清掃を充分に行うことなどにより処理装置の機能を充分に引き出すことが出来る。

 

PD-14"Fuel Quality and Engine Quality-It is the Sum That Counts" I.N.A.Ahlqvist (Wartsila NSD Finl and Oy, Service, Finland)

ヴァルチラ社での研究から、将来の舶用機関は電気モーターに取って代わられると予想している。それ故、燃料問題というのは発電に使用される一次エネルギーの問題となる。発電の方式により要求される一次エネルギーは、太陽光、ガス、石油、バイオ、石炭、ウラニウム、水素など非常に広範囲である。燃料電池が実用化されるまでは、天然ガス、重油、水素などを燃料とするディーゼルエンジンが使用されるであろう。現在の舶用燃料はISO、CIMACなどの燃料規格に適合するように作られているが、これによって燃料価格が高くなっている。エンジンメーカとしては、どんな燃料(燃料規格のない)でも使用できるようなエンジンを作ることを目標としているが、それが実現できるのはエンジンの許容性(どの程度の粗悪燃料まで使用できるか)と供給燃料性状とを比較して、そのエンジンの許容性が燃料性状を上回わるときである。

 

PD-15"Marine Fuel Qualities as They are and will be "Kiyoshi Inoue(Diesel United,Ltd., Japan)

低速ディーゼル機関の信頼性は、燃料性状に強く左右される。燃料によると見られる致命的な機関故障は触媒粒子によるアブラシブ摩耗と燃焼性の悪い燃料によるスカッフィングや凝着摩耗である。現場で異常摩耗を早期に見つけること、的確に原因究明することは非常に困難である。これらのトラブル発生をバンカー性状から予知することは、さらに困難である、エンジンメーカの技術者としては、機関をより安全に運転するためには次のような提案をしたい。低速ディーゼル機関の燃料仕様は不十分であり、化学分析、示差熱分析、燃焼性試験(FIA-100)、圧力容器による火炎観測などによりその燃料がそのエンジンに適切かどうかを判断ことを推奨する。バンカー時の性状表は第三者中立機関による信頼性のあるものにする。

 

PD-16"User's Request to Marine Fuel Oil "H. Miyano (NYK Logistics Technology Institute Co.,Ltd.)

NYK輸送技研での調査結果を基に舶用低速ディーゼル機関における燃料性状と機関故障との関連性について述べた。社内で実施した燃料性状(MCR,TSE)と機関トラブルとの関係調査では、MCR(残炭分)が18m/m%を越えると燃焼系に致命的なトラブルが発生すること、TSE(全夾雑物)が0.1m/m%を越えると燃料前処理システムは致命的なダメージを受けることが明らかになった。

また、燃料前処理装置の試験では、Al+Siの現場での分離効率は通油量に大きく左右され、その効率もAl+Siの粒径によっても大きく変化することが分かった。これらのことからユーザーとしては、機関の安全運転の見地から舶用燃料のこれ以上の粗悪化の阻止、燃料性状の安定化、信頼性のある機関設計と燃料性状の明示、燃料前処理システムの規格の確立、IS08217やCIMACリコメンデーションに安全の概念を導入などを要望する。

 

3. あとがき

このパネル討論は、舶用燃料がテーマであったせいか会場はほぼ満員の盛況で非常に活発で中身のあるものであった。時間が2時間に制限されたため討論の時間が少し不足したのが残念であった。

 

 

 

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