最後は、東京商船大学の小嶋満夫氏による講演であった。講演の主旨は、機関効率の更なる向上を図るためには複合サイクルが必要であり、その場合、一般に蒸気タービンが使用されるが、熱源温度が低い場合には、アンモニア・水混合液を作動流体とするDCSS付のKalinaサイクルが有望だと考える。このDCSS付のKalinaサイクルのサイクルシュミレーションを行った結果、タービン入口蒸気温度が400℃で蒸気・液相分離温度が60℃において、最適サイクル効率が28%として得られる事が判明した。これより複合サイクルの場合には、総合効率が50%以上に向上されるであろうと報告があった。
(Marine Fuel and Lubricant Technical Consaltant 花島脩)
New Energy Systems(2)
本セッションは、収容人員51名の部屋で、ABB Turbo System, LtdのH. Born氏と東京商船大学の刑部真弘氏の両議長の下で行われ、三つの論文が発表された。各講演共に多数の出席者の下に活発な質疑応答がなされた。紙面の都合で各講演内容の概要のみを以下に報告する。
最初の講演はUniversity of Newcastle upon TyneのM. Jefferson氏らによる、舶用ガスタービン推進システムのコンピュータシミュレーションの開発に関する内容であった。本シミュレーションは多様な運転条件の下でのガスタービンの動的性能を解析するために有用である旨の報告があった。
第二番目の講演は、運輸省船舶技術研究所の春海一佳氏らにより、再熱燃焼(主燃焼器から排出される高温高速気流中に燃料を投入して拡散燃焼させる)という燃焼方式について実験的に調査した報告で、主燃焼器の燃料を水素とし、再熱燃料としては水素、メタン及びメタンと水素の混合気を用い、高温気流中での再熱燃料の着火性、再熱による窒素酸化物の排出特性の変化等に関する報告があった。最後の講演は、運輸省海技大学の角和芳氏らによる二隻の船舶で行った風力発電に関する報告であった。風力発電により、燃料消費量が、一隻では、187.6kg/hrに対して0.6kg/hr低減し、他の一隻では、1,764kg/hrに対して12.9kg/hr低減したと報告があった。
(Marine fuel and Lubricant Technical Consaltant 花島脩)
Lubrication and Lubricant(1)
本セッションでは、ディーゼル機関の潤滑に関連する3件の発表が行われた。聴講者は90名程度であり、活発な質疑応答が行われた。発表された論文の概要は以下の通りである。
Chapuyら(CIMAC)は、CIMACの機関の潤滑に関する課題を扱うワーキンググループの研究成果について報告した。中速ディーゼル機関における潤滑油の消費や本グループの将来の研究課題について詳細な説明がなされた。
Allenら(Castrol Marine)は、シリンダ潤滑に着目した機関特性試験について報告した。境界潤滑及び薄い油膜のメカニズム等について説明があり、将来の高圧力機関のためのシリンダ潤滑に関連した様々な提案がなされた。
高負荷運転時の大型舶用ディーゼル機関において、ジャーナル軸受内の油圧は極めて高くなり、ホワイトメタルの破損につながる恐れがある。そのため、油圧の評価は主軸受の設計・開発に必要不可欠である。そのような観点から、Yamashitaら(Takasago R&D)は、ジャーナル軸受における油圧を測定するための高い応答性を持つ圧力センサを開発し、詳細な実験を行った。
(船舶技術研究所 平田宏一)
Lubrication and Lubricant(2)
本セッションでは、ディーゼル機関の潤滑に関連する4件の発表が行われた。発表された論文の概要は以下の通りである。
新しい機関の迅速な開発やコスト低減のため、潤滑油フィルタの改良が必要とされている。フィルタの保守間隔は、機関の分解検査の間隔と同程度にする必要があり、そのためにはフィルタの信頼性や効率を損なうことなく、簡単な構造とすることが望ましい。そのような観点から、Lennartz(Boll & Kirch Filterbau GmbH)は、新たな潤滑油フィルタを提案し、その実験を行った。
Roman(Marine Lubricant R & D)は、舶用潤滑油の中和速度を測定した結果を報告した。潤滑油の性質を変化させることなどによって、中和速度を2倍以上に増加することができることを確認した。