Propulsion Systems(3)
本セッションの3件の講演は、水作動アクチュエータの設計・数値シミュレーション、魚ロボットの製作・検証実験および舶用プロペラの設計・製造であった。
最初の水作動アクチュエータの研究発表では、安全性や汚染防止など諸々な理由からアクチュエータの作動流体として水を使うことがある。そこで、イギリスのT. Roskilly教授は水作動4バルブ・アクチュエータを考案し、また、水漏れ、腐食や配管の詰まりなどに対処するため、自己学習ファジー制御則による制御を採用された。数値シミュレーションの結果は良好だった。つぎに、船研の平田氏は、海洋調査・開発や環境保護のために使用する、推進・運動性能のすぐれた魚ロボットの開発に関し発表した。2つの魚ロボットが設計され、魚ロボットの尾鰭は2つのサーボモータで駆動された3つのジョイントから構成されている。尾鰭のいろいろな運動モード(周波数、位相角など)に対し興味深い実験結果が示された。最後に、三菱重工の川前氏は、舶用プロペラ強度の観点から、プロペラの設計、製造および検査について総合的な講演をされた。初めに、設計においては翼応力の分布に注意すること、鋳造工作においては、凝固時に発生する好ましくない温度分布を補正するためのpaddingやヒータの採用、脱ガスや鋳込み速度に注意すること、さらに、非破壊検査法の採用が重要であると説かれ、各種興味深いデータを示された。
(日本海事協会 凌志浩)
Ship Planning, Design & Production(1)
本セッションでは3件の講演があった。
最初の講演は、日本海事協会のMr. K. Nishifuji他によるもので、主に内航船に多く搭載される加圧式LPGタンクの製造時の応力除去焼鈍について検討している。タンクに使用する鋼板の板厚が40mm以下の場合、溶接後の応力除去焼鈍は不要とされているが、40mmを超える鋼板の場合について、実験及び破壊力学を駆使し応力除去焼鈍の省略の可能性を示した。
次の講演は、アテネ国立工科大学のMr. V. P. Lambropoulos他によるもので、主機の部品レベルにまで細分化された要素ブロックを、適切に定義付けされたインターフェースにより結合することにより、推進プラントさらには船全体の性能をシミュレートする手法を紹介するものである。実際にコンテナ船への適用例が紹介され、特に初期段階で設計を評価するにあたって有効であることが示された。
最後の講演は、イタリア船級協会(RINa)のMr. M. U. Doglianiによるもので、客船等において船首部船体フレア部に発生するスラミング圧力の評価とそれに基づく当該部品の強度設計手法の確立、並びに高速艇(HSC : High Speed Craft)の荒天時における船体の挙動とそれに対応する操船面での制限を提示している。いずれも船体運動(加速度、曲げ応力)を含む実測結果に照合したものであり、船体強度の確保のみならず、乗客の快適性改善にも有効であると考えている。
(日本海事協会 岡山透)
Transportation and Ship Management
本セッションでは3件の講演があった。いずれもIT(Information Technology)関連ということから、聴講者の数も多く、関心の高さが窺われた。
最初の講演は、ノルウェー船主協会のMr. N. Telleによるもので、パソコンの普及を含む情報・通信技術の発展を基礎にした、同技術の船陸間情報交換への活用とそれによる運航管理と船舶管理手法に関する最近のノルウェーの研究機関による成果を紹介している。今後の輸送様式の変化(陸上輸送機関との整合)、企業統合等による組織の巨大化・複雑化に対応する必須の技術であること、またその分野での自己の先進性を示した。
次の講演は、三菱重工業のMr. T. Ono他によるもので、今後のモーダルシフトに対応するため、衛星通信と携帯電話網を使うパケット通信技術を適用した、貨物の輸送状況に関する船陸間でのリアルタイム情報交換を実現する輸送管理システムを提案している。主に内航船と陸上トラックを対象としたもので、実地試験結果の結果として、その有効性が実証された。
最後の講演は、アイ・エイチ・アイ・マリンのMr. Y. Shimuraによるもので、ISMコードで要求される船舶管理システムの一環として、船陸間通信を利用してエンジンの運転データを交換することにより、修理・メンテナンス等に関する判断・指示を、船陸共同で的確にかつ早急に行えるシステムを紹介している。エンジン以外に船舶管理システムとして要求される項目もシステムに包含されること、さらに十分な実績とそれに基づく本システムの有効性が示された。
(日本海事協会 岡山透)