これにより一軸にもかかわらず推進系の冗長性を確保できることとなる。論文ではこれらの推進装置の優位性を論じるとともに使用実績を紹介している。
二番目の講演はスペースシャトルの発進及び帰還を支援する“ekranoplane”に関するフィージビリティスタディで、著者はロシアと日本の方である。“Ekran”は“screen”の意味で、英語では“Wing-in-ground effect plane”、日本では「海面効果翼船」などと称され、ホーバークラフトと航空機の中間的な性格を持ち海面すれすれを反力を利用して飛行する。再利用可能なシャトルASP(aerospace airplanes)の発進・帰還をekranoplaneから行うことで、必要なエネルギーの節約、使用済みロケットの落下の危険回避、発進及び帰還地域の選択自由度の拡大など、宇宙開発に関連する経済性及び安全性を高めることが可能となる。ekranoplane及びASPの試作機や風洞試験の結果、空力特性の検討結果が報告された。更に、複雑なオペレーションに必要となる制御の問題に関して論じられている。
(日本海事協会 馬場宣裕)
Propulsion Systems(2)
本セッションではクラッチを含む軸系に関する発表が2件、軸系アライメントにおける船尾管軸受形状の影響に関する発表が1件、計3件であった。
最初に、ノルウェーのH. Engja教授より、クラッチをON/OFFするときに発生するトルク等の過渡状態量を求めるため、bond graph methodを用いて軸系の支配方程式を求め、方程式を数値的に解くことにより過渡状態をシミュレーションする方法の解説があった。また、計算例を用いてこの方法の有効性を示した。2番目の講演は芳村教授による、それぞれ正および負の方向のトルクを伝達する2つの電子制御油圧スリッピングクラッチを用いた推進軸系に関する発表であった。シミュレーションの結果、固定ピッチプロペラを持つ推進軸系で、正負方向の2つのクラッチを採用したことにより、増減速においてプロペラ回転追従性能が向上し、特に減速性能が改善された。3番目のNKK吉井氏の講演は、推進軸系アライメントにおける、油潤滑船尾管後部軸受けのスロープ形状(Single, Partial, Slope)の影響、さらに軸受支持モデル化の違い(単純支持、弾性支持、油膜支持)による計算結果への影響について興味深い結果を示された。なお、油膜特性は、レイノズル方程式を有限要素法で解くことにより求められている。このとき、軸が軸受けと接触する前後で油膜特性が大きく変化することは注意を要すると強調された。
(日本海事協会 凌志浩)
Ship Planning, Design & Production(2)
本セッションの1番目の講演は舶用プラントにおける各モジュールの重要度解析に関する発表であった。機関プラントの各モジュール(主機、ボイラシステムなど)の信頼性を表す指数として、重要度(importance degree)がある。この重要度を決定する要素は、(nesessity, failure degreeなど)の四つであり、諸々の理由によりこれらの要素を確率変数として扱うことが困難なため、論文著者神戸商船大のYu Hong Liang氏はファジー関数の導入を提案し、興味ある計算例を示した。2番目の講演は船体構造における防撓パネルの最適設計に関する発表で、防撓パネルの溶接において、溶接歪みや残留応力を数値計算により求める方法をフランスのT. T. Chau氏が提案した。数値解析法は熱弾塑性問題を有限要素法により解く方法であり、温度・相に応じた線膨脹係数や入熱・冷却時間などが精度良く考慮されている。計算例として溶接入熱の違いによるパネルの変形や残留応力の違いを示した。最後にClassNKの馬場氏よりXML(eXtensible Markup Language)を用いたプロペラ設計データのEDI(Electronic Data Interchange)実験に関する発表があった。XMLはネットワーク環境での使用に適しているため、EDIにおけるデータ交換規約としても期待できる。そこで本論文では、XMLを「船級承認用のデータをネットワーク経由で交換する場合」に用いたときに生じる問題を実験的に検討を行った。なお、4番目の講演はキャンセルされた。
(日本海事協会 凌志浩)