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Noise and Vibration(1), (2), (3), (4)

Noise and Vibrationのセッションは、3件×4セッションで計12件の論文発表があった。うち5件は外国人の発表で国際色豊かなセッションとなった。

内容は、振動の逆解析問題、ねじり振動のアクティブ制御、ねじり振動ダンパー、架構振動、プロペラ振動、ギヤ付き軸振動、振動付加質量、ウエーブレット解析、船舶騒音、主機騒音、流体励起振動といった感じで、非常に多岐にわたり、振動騒音問題は古くて新しい問題であるということが再認識させられた。

もちろん、計算機の速度向上、解析技術の発展に伴い、新たな手法等の導入も盛んで、大変興味深い半日の4セッションであった。

講演室は小さく、参加者も20〜30人と多くはなかったが、マイクを使わずに肉声での質疑がなされ、アットホームな雰囲気であった。参加者は実務者が多く、理論的な基礎検討の話題の時に聴講数が少なくなってしまったこと、及び1件第一著者が欠席で簡単な代読で質疑が省略されてしまったことが少々残念なこととしてあげられる。

(東京大学 鎌田実)

 

Propulsion system(1)

本セッションでは4件の講演があったが、3件が高速船に関連するものであった。小さな講演会場であったこともありほぼ満席の状態で、Chair personの適切な進行のもと、実験の精度やコストに関する質問があった。

一番目の講演は高速船のプロペラのroot erosionに関する話題であった。erosionはプロペラの耐久性に悪影響を与えるだけでなく操船時の安全性にも影響する。本論文では、プロペラの後縁の6種類の翼形状に対して、水槽試験により静的及び動的な揚力特性を検討している。得られた結果を参考に作成した改良形状のプロペラと従来のプロペラによる実船試験において、翼面での滑らかさを観察した結果、効果が確認された。

二番目の講演は高速船のwater-jetの吸入ダクトの損失、特に2つの吸入ダクトにおける干渉に関して検討結果を報告している。吸入ダクトの組み合わせとしては“flat and flat”と“flat and tapered”の2種類に対して、吸入箇所でのグリッドの有無、IVR(Inlet Velosity ratio)パラメータに注目して、風洞試験結果とCFDによる計算結果の比較を行っている。その結果、IVRが設計点付近では両者の差は少ないが大きいところでは差があること、グリッドがある場合は計算は損失を大きめに評価すること、ダクトが二つの場合は干渉があることなどが確認された。

三番目の講演は高速での推力に関して最適な設計点推測に関する考察である。プロペラヘの流入速度、プロペラ直径、馬力、回転数からなる“A-chart”と、実験的に得られた翼面積比毎のピッチ比、効率、キャビテーション特性の関係を示す“B-chat”なる図から設計段階で簡便にプロペラ要目を求める手法を提案している。

最後の講演はCLT(Contracted and Loaded Tip)プロペラの優位性、並びにその実証時の軸馬力計測に関して論じている。CLTプロペラとは、前面と後面の圧力場を区切る目的で翼先端にend plateを取り付けたものである。これにより効率の向上、キャビテーション性能の改良、騒音及び振動の低下が得られ、最大10%程度の効率が向上する。検証のための試験が、45000dwtのBulk Carrierで2隻に従来型、3隻にCLTプロペラを装着したケースで実施されたが、その際の海上試運転時の軸馬力計測結果に関してその妥当性を考察している。

(日本海事協会 馬場宣裕)

 

New Propulsion System

本セッションでは一件の講演が取り消しとなり二件の講演となった。何れの講演も新規性に富んだもので興味ある内容であった。

一番目の講演は、Azipod及びCRPという新方式の推進装置を論じたものである。始めに電気推進方式を検討する際の要点を論じシミュレーションの重要性を主張している。Azipod推進装置は“azimuthing podded”に由来するもので、従来の舵の位置に電気駆動のプロペラを配置したものである。Azipodの特徴としては、推進効率の改善(8〜10%)、操縦性の向上(回転半径が30%減少、緊急停止性能の向上)、伴流が改善されることによる流体力による起振力の低減がある。また機関室のスペースの削減効果もある。CRP(Contra Rotating Propeller)は従来型の推進系にAzipodを装備したものである。

 

 

 

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