日本財団 図書館


Environment(1)

K.UEDAら(船研)は、ケミカルタンカーのタンク洗浄水の使用量を削減するために水ジェットと水膜流れによる垂直壁面の洗浄効果を実験的に調べ、小径ノズルの使用を推薦している。

S.HORIKIら(東京商船大)は、機械部品の油落としに使用されている高温高圧蒸気に比して低エネルギー消費につながる100℃以下の飽和水による洗浄効果をリベット充填槽で実験的に調べるとともに充填槽内の2相流れを1次元的に解析している。温度の高い方が洗浄性が高いが、80℃程度で良好な結果を得ている。

T.MAJIMAら(船研)は、ベンゼンを輸送するケミカルタンカーの船上作業環境における空気中ベンゼン濃度を調査した。ポンプ室およびタンク洗浄時のウェザーデッキにおける濃度が高い。発癌リスクの試算に基づき、マスクの着用が有効であることを示している。

(船舶技術研究所 平岡克英)

 

Environment(2)

リージョナルな環境問題に関して、Paula SPREUTELS(Texaco Technology Ghent,Belgium)により、イギリス海峡を含む北海南部において海上を航行する船舶および港内の船舶から排出される硫黄分の陸地への拡散と蓄積の計算例が示された。中でも港において排出される硫黄分の寄与が非常に高いことが示された。MARPOL73/78付属書VIが発効すれば、北海で使用可能なバンカー油の硫黄分最大含有量は1.5%に規制される予定であり、北海地域で販売されるバンカー油の30%程度がその規制をみたすとの見通しが示された。

グローバルな環境問題としてライフサイクルでのCO2排出量を評価した発表が2編行われた。H.SHIROTAら(船研)は舶用主機関の船舶のLCI(ライフサイクルインベントリー)解析を行い、ライフサイクルでのCO2排出量の割合は、鋳鍛鋼部品製造時が約90%、エンジン本体製造工程が約10%であることを示した。また、M.KAMEYAMAら(船研)は、85,000DWtタンカーのLCI解析を行い、船齢25年の仮定に対してCO2排出量の98.5%は運航中の燃料消費に起因し、船体建造時は約1.5%に過ぎないことを示した。

(船舶技術研究所 平岡克英)

 

Environment(3)

このセッションでは、3つの論文が発表された。一つ目は、神戸商船大のIshida先生らによる研究で、重油流出等の海洋事故に対する訓練およびシュミレーションを、LANを使って行うものである。具体的には多数の被験者を、事故を処理する複数のグループに分け、電子メール等で連絡を取り合いながら仮想事故に対処させていく実験を行っている。事故情報の伝達は、多くのファクターに影響されるため一種の複雑系(Complexity)となっている。非常に新しい試みであり、今後の進展が期待される。二番目は、船研のHitomi氏らによる、流出重油のレーザーライダー(Imaging Lidar System)による検出についてである。船上または航空機からの流出重油の検出方法等が示された。これに対して会場の画像処理研究者から検出性能等に関する質問が出され、活発な討論がなされた。三番目は、松下電器のTsutumi氏らによる、可燃性ガス検出センサーの信頼性と評価法に関する発表であった。信頼性評価のための加速試験(実際の時間よりも短時間で行う信頼性実験)を行う際に、フォルトツリー解析が非常に効果的であることが示された。船上において可燃性ガスの漏れは、船舶職員の生命を脅かす重大事象であり、検出センサーの信頼性を短時間で正確に評価する手法の開発は重要であると考えられる。

(東京商船大学 刑部真弘)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION