同過給機は低質油運転における信頼性を主眼に各種試験が実施され良好な結果が得られている。また可変タービン、ウエストゲートの効果についても言及された。
過給機はディーゼル機関の要求の多様化に応じ、大流量化、高効率化、高圧力比化、可変化などの方向が示された。
(ターボシステムズユナイテッド 秋田隆)
Diesel Spray, Diesel Combustion
両セッションで7件の発表があった。前者のセッションで長崎大学の石田らは、噴射ノズル口径が排気煙濃度に及ぼす影響を実機で調べ、また生成される微粒子の径を計算で推定している。群馬大学のKoらは、燃料噴霧の壁面衝突後の挙動について観察し、衝突後の到達距離や空気導入について詳しく解明している。東京大学の畦津らは、ピエゾを使った電子制御噴射系により前高・後高の噴射率を実現し、燃焼制御の可能性を詳細に検討している。広島大学の西田らは、噴射ノズルの10倍可視化モデルを使用し、サック内流れが噴霧形状に影響することやミニサックの利点を解明している。
後者のセッションで三菱重工の遠藤らは、3次元の噴霧燃焼シミュレーションを開発し、舶用大型機関の燃焼と熱伝達の推定に役立てている。群馬大学の岩崎らは、燃料の2段噴射を使って副室および直噴機関の燃焼を制御する試みを行っている。北海道大学の近久は、2段燃焼による排気煙とNOx低減に関するこれまでの一連の研究成果を紹介した。
外国からの発表はなかったものの、これらはいずれも優れた研究で、この分野における日本の優位性を示した。(九州大学 高崎講二)
Fuel and Combustion(1)
当セッションでは、割り当てられた3論文がいずれも廃プラスチックを燃料油に混入した、いわゆる廃プラ油の燃焼特性や排気エミッションに関するものであったため、議長提案により、まず最初にそれぞれの発表者が15分間のプレゼンテーションを行い、その後一括して質疑を行うパネルディスカッション方式がとられた。共通の研究テーマ故、廃プラ/重油の混合比に対する着火性や潤滑性などについて発表者相互間、さらには聴講者を巻き込んでの活発な討論がなされた。省エネや環境間題ともからむ廃プラ処理方法の一つとして、今後の研究進展が期待された。
(三井造船 薦田哲男)
Fuel and Reliability
「Fuels problems」か「Problem fuels」か、燃料と機関信頼性に関する関心は非常に高く、約50名の聴講者を集めて4編の発表が行われた。燃料油清浄機性能から見たエンジンの信頼性向上、燃料性状とシリンダ性能の相関およびトラブル対策、船社からみた船上における燃料前処理システムのあり方、海上におけるマーフィーの法則について、など大変興味深い講演がなされた。
(三井造船 薦田哲男)
Control and Simulator(1)
本セッションでは、荒海での主機関の回転制御システム、PCネットワークを用いた舶用ディーゼルプラントシミュレーター、ボンドグラフ法を用いたディーゼル機関の過渡性能のモデリングについて有益な講演がなされた。
(三井造船 薦田哲男)
Enigine Control and Simulator(2), Fuel and Combustion(2), (3)
Enigine Control and Simulator(2)では3つの論文が発表されたが、その内容は多岐にわたっていた。まず最初の論文では、荒天航海時における主機コントロールに対する適応制御の考え方が提案された。つぎの論文では、21世紀のマリンエンジニアリング教育はコンピュータシミュレーションとモデリングに重点をおくことが望ましいという提言があり、続いて主機関シミュレータに関して、実用性の更なる向上には実船データ蓄積が重要であることを主張する研究が発表された。Fuel and Combustion(2)および(3)では、それぞれ3件の論文が発表された。蒸留温度の観点から見た重質油の燃焼特性、近年の重油の低質化によってますます問題となっている着火遅れと後燃えに対応した新しい燃料噴射システムの提案、ブレンド燃料油を使用した場合の排出物に関する研究、窒素酸化物とすすを同時に減少させることを目的とした燃料に関する研究、気体燃料と空気の混合物に軽油を噴射した場合の着火遅れ、油の水エマルジョンが燃焼する際の相分離の特性などに関する研究が発表され、環境問題とも関連することもあり、いずれも参加者の高い関心を引いていた。
(神戸商船大学 福岡俊道)