日本財団 図書館


舶用機関の進化

舶用機関の最近の開発の中で特筆できることは、中・低速機関におけるフレームリングの装着やより高い平均有効圧でしょう。

潤滑油の性能に燃料も影響を与えます。軽油の品質が、潤滑油消費量を異常に増加させるライナーラッカー生成に関与している可能性があります。残さ油の品質に関しては、ISME Tokyo 2000でG.C.Fleischhackが述べたと共に、本日の午後のパネルデスカッションで詳細が討議されるでしょう。

 

シリンダー油

シリンダー油の役割で最も重要なのは、燃料油の硫黄分に原因するリング・ライナの腐食磨耗を防止することでしょう。ISME Tokyo 2000の講演の中で、酸中和機構を検討するのためのElf NAMO試験法がJ.P.Romanから紹介されましたがその他Shell法もあります。

その他、ISME Tokyo 2000では、耐腐食性と関連を持つ硫酸の露点が過去報告されていた値より約100℃も高いことがC.Schenkより報告されました。

第二番目に、高温度下での問題として、油膜厚さとピストンリング溝中の堆積物生成の二つがあります。油膜厚さが十分でない場合には、凝着磨耗・(スカッフィング)或いはアブレシブ磨耗の原因となりますから、シリンダー油は、高温でより高い粘度を示すことが要求されます。

油膜厚さと磨耗との関係をBPのDr.S.Mooreが検討して1995年のCIMAC大会で発表した素晴らしい論文があります。

耐スカッフィング性を評価する実験室的試験法として、Cameron-Plint reciprocating wearrigを使用したShell試験法があります。

ピストンリング溝中に過度の堆積物が生成すると過大磨耗の原因となりますのでシリンダー油は、より優れた清浄性を要求されます。

最後の第三番目として、燃焼生成物が原因する障害があります。具体的には、掃気口に堆積物が堆積することと、scavenge spaceの堆積物が原因となる火災の恐れの二点です。

従いまして、第三番目のシリンダー油の役割として、堆積物が堆積しないように、優れた清浄性を持つことが必要とされます。

シリンダー油全般的なこととして、ISME Tokyo 2000の講演の中に、R.W.Allenからシリンダー油の開発に関する紹介がありました。

 

中速機関用エンジン油

中速機関用潤滑油の最近の使用条件の特徴は、低潤滑油消費率、より長い油交換時間、少ない潤滑油保有量の三つです。

この結果、機関の潤滑条件がエンジン油に与える苛酷さの度合いが増加しており、その苛酷さの度合いを定量化出来る手法があると非常に有用です。

このため、1998年のCIMAC大会で、中速デイーゼル機関が潤滑油単位質量当りに与える苛酷さの度合いの次の尺度『OSF』がJ.Hengeveldより発表されました。(図1)

 

OIL STRESS FACTOR FOR MEDIUM&HIGH SPEED ENGINES

 

027-1.gif

図1 中・高速機関のOil Stress Factor

 

OSF=(1/R)*(1-e[-Rt/V])

ここに、OSF:Oil StreggFactor, kWh/g

R:ブレーキ出力時間当りの潤滑油消費量、g/kWh

t:潤滑油の使用時間、hrs

V:単位出力当りのクランクケース内循環油量、kg/kW

更に、潤滑油消費量が減少しますと使用潤滑油の塩基値(BN)が減少します。使用油のBNは、下記式から計算出来ます。(図2、3)

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION