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図2. Fire ring serves to remove carbon from piston crown

 

そして、ピストンリングとライナーの摩耗について、設計的観点からセラミックリングや、窒化や高周波焼き入れライナーなどの摩耗やスカッフィング対応手段が用いられた点などが強調されている。

<さらに低い燃費の要求>

2度の石油危機は、重質油焚きの恩恵にも関わらず、より低い燃費の継続的な要求に傾倒させた。このために、エンジン設計者は3つのクリティカルな手段である1]気筒内圧力の増大、2]噴射圧力の増大、3]過給機効率の向上、の技術的対応をしたことを説明している。図3に燃費のトレードオフの関係を示している。そして、重質油焚きエンジンのロングストローク化や、高圧噴射装置の採用、さらに2段過給方式を用いることなく対応してきていることが説明されている。

 

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図3. Fuel consumption trade off

 

<エンジンコストの低減の要求>

中速エンジンの市場価格では大きな下げ幅が要求されてきている。需給バランスが崩れ、エンジン製造者は製造コストの低減により対応している。エンジンコストの80%は部品20%により占められている。コスト削減対策として、部品の機能を組み合わせることと、部品点数を少なくすること、さらに生産でのジャスト・イン・タイム方式の採用がある。また、3DのCADを用いて、設計ファイルを図書化することにより組立図面や部品図、取り扱い説明書などのコストを下げることができる。図4に統合化されたフロントエンドが示されている。

 

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図4. Integrated front end

 

<排気エミッションの低減の要求>

2000年に、舶用エンジンはエミッション規制に適合せねばならなくなった。英国海峡、バルト海峡および東京湾のように陸に近接した交通量の多い地域においては、船からの排出硫黄物について関心が持たれ、それらを削減させるための圧力がある。HFOのタイプはNOx、HCやCOよりパーティキュレト(PM)に影響を与える点と法規制との関連が言及されている。

 

3. HFOの有用性とまとめ

HFOは原理的に残さ油で、廃棄物である。海上物流の成長のために、HFOの需要は増大しており、陸上の蒸留製品のための原油のより多い使用の結果として、HFOの供給が増大している。HFOのコストの優位性は明らかである。(さらに、HFOの代替に関して、油のリファイナリについて企業の負担問題や、陸上でのHFO使用についての法制上の問題などについて説明されている。)

この40年間、重質油の莫大な価格優位性が重質油焚き中速ディーゼル機関の技術的な問題を克服する大きなインセンティブを与えてきた。今日、重質油焚きエンジンは明らかに継続的な開発により優位性を保ってきた。ただ唯一の残された脅威は陸上環境に対する舶用エンジンから排出される排気エミッションの影響である。

 

 

 

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