軍艦での使用では、船が深刻なダメージを受けた場合に、切り離して独立に運転できるよう、船内を幾つかの独立した区画に分割しておくことが望ましい。電気推進システムはこうした方針に非常に適しており、異なった区地域に主機を配置して、夫々を主電力供給パスによって繋ぐようにすることが出来る。通常時の運転では、電力は発電機のどのような組み合わせによっても供給可能である。システムにダメージが生じた場合には、影響を受けた区画は、残りのシステムに影響を与えないよう、分離することが出来る。Fig.6に、十分に統合化された電気推進システムを装備した軍艦の、典型的なシステム構成を示す「27」。
ディーゼル発電システムは、船で発電を行う際の最も一般的な方法であるが、ガスタービンの採用は電気推進の分野にも広がってきている。ガスタービンによる発電は、特に50/60Hzによる配電から400Hzまたは直流による配電への移行に伴い、軍事及びクルーズ船両方の電気発電において、広く受け入れられて来ているようである。ガスタービンの非常に高い回転数は、高い周波数による配電をより魅力的にしている。
4.5 操作性と保守性
環境上保持性は、海運システムを効率的かつ安全に運転し続けることで達成される。簡潔さと保守の容易さに重きを置いてプラントを設計することが、未来においては重要となろう。そこでは離れた場所にいる技術者が現場の技術者と同様に、コンピューターを使った、総合システム「保守管理」装置に、より一層依存するようになり、その装置を用いて潜在的な問題を診断したり、それを正す計画を立てたりする。このコンセプトをFig.7に示す。
現在、主要エンジンメーカーが、状態モニターリング及び故障診断を助ける様々のソフトウェアを開発している。しかし、この種のソフトは、機関室内の少数の機械に特化して作られたものであり、一般的に使用できるようなものではない。ここで指摘しておくべき鍵となる課題の一つは、全体の動力・推進システム全体の保守管理であり、それは非常に多くの要素を統合させることである。ニューロネットワークやファジー理論ようなのような手法を使うことによって、先進的な状態モニターリング、故障、保守スケジューリングシステムが開発され、システム全体の保守管理が行えるようになるかも知れない。
装備の標準化とモジュラー化により運転員は船上で自らの腕前を生かして対処することが容易になるであろうし、陸上おいて行うような部品交換も行うことが出来るようになるだろう。海運における自動化技術が直面している最大の問題の一つは、複数のシステムを安全に連携させることが出来るかと言う点である。製造/加工業界には、データコミュニケイションに関して様々な固有のスタンダードが多数存在し、海運業界においては広く合意された単一の手法と言うものが無い。沢山のスタンダードが登場してきているが、全ての応用に適合したスタンダードと言うものは存在しない。
情報技術の革命が勢いを得るにつれ、通信網(telematics)の応用における研究努力が増大している。これは海運における諸作業に対しても莫大な恩恵をもたらし、海運システムの遠隔運転、モニターリング、保守に大きな可能性を開くことになるかもしれない、しかし、このコンセプトは、使われるコミュニケイション・インフラの性能及び信頼性に、非常に大きく依存している。