中間冷却器付再生式WR-21ガスタービンは80%負荷で42%の設計熱効率を有する「25」。先進サイクルガスタービンは、高速回転電機と組み合わせると非常に発電に適したシステムとなり、充分統合化された電気推進システムにおいては、これが一般的な方式となるかもしれない。
ガスタービンにおけるセラミック材料の使用は、ここ暫くかなりの興昧を集めているテーマである。ガスタービンのサイクル熱効率は、可能な最高燃焼温度によって制約されている。温度を挙げるほど高い熱効率が得られるであろう。最高温度は熱機関の高温部分に使われている材料の物性によって制約され、一般的にはその融点は1300℃前後である。非常に優れた高温・耐久性を持つセラミック材料を採用することにより、サイクル最高温度をかなり高めることが出来、熱効率を20%改善し、出力を40%の増加出来る可能性がある。
4.4.1 単純サイクルの改良
(a) 複合サイクル
ガスタービンからの高温排ガスを排熱回収ボイラー(HRSG)に供給し、そこで得られた蒸気を蒸気タービンで使用すると言う、ガスー蒸気複合サイクルを採用することによって、より高いサイクル効率を売ることが可能となる。最新の陸上型・大規模複合サイクルシステムの熱効率は、58%に到達したと報告されている「11」。こうした複合システムは、初期コストが高く、複雑で重量が大きいが、燃料が節約出来る点で、大型クルーズ船などある種の船舶においては、魅力的な選択肢になりうるかもしれない。全システム効率は、非常に高くなる可能性があり、特に排熱がキャビンや炊事場などで利用されるときはそれは顕著である。
(b) 湿り空気を用いるタービン(HAT)
HATコンセプトは、ガスタービンの熱効率を上げ、経済性を高める為に採用される可能性がある。圧縮機からの空気は、ガスタービン燃焼室の前段で、コラム内において速やかに加湿される。こうしてサイクルに水を入れることにより、タービン内の流体流量が増し、出力率及び全サイクル熱効率が向上する。加湿は排ガスからの余熱を用いて行われ、加えられる水の量は、主に運転条件と燃焼火炎の安定性に依存している「26」。HATサイクルのテストは、中間冷却器付き航空タービンを使って行われたが、燃焼器に関して、かなり大きな変更が必要となっている。
4.5 電気への変換
プロペラ直結型の舶用ディーゼルエンジンは、ディーゼル電気プラントと比べ、高効率で、初期コストも低いであろう。しかし、ディーゼル電気システムの場合は、遥かに柔軟性のある器機配置が可能である。充分統合化された電気推進システムと言うコンセプトが、特に軍艦やクルーズ船において、ポピューラーな物になってきている。現代の軍艦は、大小の主機を組み合わせて使用することにより、通常時及び高速時の運転を効率の良いものにしている。非常によく見かけるものとして、2ヶの高速用機関と2ヶの通常用機関を機械的に推進器に接続するとともに、沢山のディーゼル発電機を設けたシステムがある。これは10台ほどの異なったタイプの主機を船に装備している場合がありうることを意味している。充分に統合化された電気推進システムを使う場合は、一般的で良く出回っている主機を少数台使用して、推進動力及び補助動力を得ることが出来、船に設置する主機の数と種類を減らすことが出来る。
クルーズ船は、照明、エアコンその他のホテルとしての電力需要が大変大きく、また乗客の為のスペースを、最大限にする必要性から、機械配置が決められている。全ての主機を、他には使いようの無いスペースに置くことによって、収入を生み出す空間を増大させることが出来る。プロペラーの駆動に電気モーターを使うことで、主機を軸ラインから離れた位置、例えぱ船楼など高い位置に置けるようになる。
推進を完全に電気で行うことによって、主機をより高い効率で運転することが出来る。従来の機械式推進システムでは、プロペラー回転数が主機回転数に比例するから、船が全負荷でない場合は、そのエンジンのとって最も効率の良い回転数・出力レンジから外れた点で、運転されることになる。プロペラーとエンジンの機械的接続を無くすことで、プロペラー回転数はエンジン回転数から独立となり、エンジンを常に最も効率の良い回転数で運転することが出来るようになる。部分負荷で運転するときは、運転する主機の数を減らし、残りの主機をそのままフルパワーかつ最大効率に近い点で運転し続けることが出来る。