4.2.3 蒸気噴射ディーゼル(STID)エンジン
このコンセプトは、高圧の過熱蒸気(500℃、180bar)がディーゼルエンジンに噴出され、その結果、追加的な出力を生み出す蒸気エンジンとして作動すると言うものである。冷却水と排ガスの熱を利用し、エンジン過給器前段の過熱器において蒸気が作り出される。この新しいエンジンは58%の熱効率を有し、NOxは1/4に低減しうると試算されている。このレベルの性能を達成する為には、約2.55の蒸気/燃料比を得る為に、4kg/kWhr程度の大量の水が必要とされる「19」。
4.2.4 燃料噴射率制御及びコモンレイル噴射システム
電子制御式燃料噴射システムの発達「20」によって、シリンダヘの燃料噴射の量とタイミング制御出来るようになり、非常に大きな可能性が開けてきた。燃料消費量抑制やNOx低減といった特定の運転条件を実現するように、個々の噴射装置の設定を決める(具体的には噴射装置の燃料噴射プロファイルを変える)事が出来る。燃料噴射時期を遅らせることは、NOx低減手段の一つであるが、燃料消費量が増えてしまう為、排ガスコントロールの第一手段にはなり得ないことが判ってきている。電子制御式燃料噴射の最も重要な可能性は、エンジン側の要請に対し、燃料噴射の量、圧力、タイミングを正確に対応させ、より効率的に燃料を供給することが出来ると言う点にある。加えて、燃料噴射装置がパソコンベースのソフトにより操作できるようになれば、マニュアルで設定を変更したり、診断テストを行ったりできるようになるかもしれない。
電子制御式燃料噴射システムの登場は、コモンレールによる燃料供給システムの実現に道を開くことにもつながる「21」。コモンレールシステムの長所は、運転の柔軟性が増すこと、噴射圧力が負荷に依存しないこと、排ガスが低公害化されること、高効率化及び運転コスト低下に伴う副次的な負荷発生が比較的少ないことなどであり、非常に魅力的な燃料供給システムが実現される。実際、幾つかのエンジンメーカーでは、電子制御式燃料噴射、排気バルブ制御の採用により、カムシャフトを無くしている。
4.3 燃料電池技術
“水素社会”と言うは、長く考えられてきたものである。高い効率が約束されており、公害の無いエネルギー源である水素が、未来の魅力的な燃料源であることは疑いも無い。水素利用における明白な問題点は、運輸や発電業界の需要を満たせるような、世界的なインフラ整備を行うことの困難性にある。ことに海運が他の運送手段に対して持っている競争的利点と言うものは、大量輸送による経済性に加えて、安くて低級な燃料、若し船舶で使用しなければ、原油精製過程において、使用不能の廃物となるだけの燃料を使用することが出来る点にあるのである。
しかしながら、現在、燃料として水素開発を推し進めようとする強力な駆動力が自動車業界にあり、これがこのコンセプトを後押ししている。実際、先導的な幾つかの自動車会社が、燃料電池電気自動車(FCEV)は2004年までに、商業的に実現されるあろうと表明している「22」。若しこれが燃料業界の長期的未来を示すものである疑いも無く、海運業も同じ技術を採用するように仕向けられるだろう。
燃料電池は本質的に電解質を利用した電池であり、水素リッチのガスと酸化剤が結合して、水と電気エネルギーを作り出す。燃料電池の主なタイプは次のとうりである「23」。