4.2 往復動機関におけるその他の開発
4.2.1 ミラーサイクル
これは4-ストロークサイクルに若干の変更を加えるものであって、ピストンが下死点に達する以前にシリンダヘの空気吸入が終了するよう、バルブタイミングを変えるものである。これによって生じた膨張過程により、シリンダ内の空気は冷え、プロセスの温度は低下し、NOxが減少する。圧縮圧力、そしてそれ故に燃焼圧力は低下し、エンジン部品への機械的負荷は減少する。この技術を実際に用いる場合は、過給器及び空気冷却器の役割が大きくなる。必要な条件は、過給器が高い効率(少なくとも70%)を持つこと、及び高い圧縮比(少なくとも4:1)を持つことである。
この方法の特徴は、燃料消費量、圧縮比、バルブタイミングに影響を与えること無く、空気温度の低さによって低NOxレベルの達成が出来ることである。Codanら「14」、によって、実際のエンジンテストで、40%のNOx低減が選られたことが報告されている。発生するかもしれない問題としては、部分負荷に不都合があること、高い着火温度を要する燃料を用いたときの燃焼問題、煤生成の増加、起動の難しさなどである。
4.2.2 フリーピストンエンジン
エンジン効率を高める為、最高ピーク圧力はより高くなり、それに伴ってエンジンに加わる機械負荷も大きくなってくる。従来型の往復動エンジンにおいて、こうした負荷の上限は、回転部分の機械要素の健全性と言う面から決まってくる。フリーピストンのコンセプトは、ピストンの直線的な往復運動を、何らかの形で直接、使用可能な出力に変換しようとするものである。これはパワータービン用に、高温高圧の排ガスを作るとか、この装置を推力ポンプやリニヤ発電器と直接結合すると言ったことで実現される。結果として。この装置は従来型エンジンに固有の機械負荷による制約はより少なく、高いピーク圧力が可能であり、より高い効率が期待できる。
この機構はもともとイタリアのPescara「15」によって1928年に発明され、タービンにガスを供給するための高圧排気生成装置として設計されたものであるが、その特許より広い応用可能性を持つものとして提示されている。その後研究の焦点が当てられたものとしては、フリーピストンエンジンポンプ「16」、スターリングフリーピストンエンジン「17」、NASAのSPREリニヤ発電器「18」などがある。フリーピストン技術の開発は、このシステムに特有の制御性の問題によって、1960年代にかなり停滞したが、現代のセンサー及び制御技術の使用によって、今では動力に関する現代の需要に答えを与える可能性を持っている。
フリーピストンエンジンには典型的な二つの形態があり、一つは単一デイスプレイサーピストン、もう一つはFig.4に示すような、コネクテイングロッドでつながれた2ヶの反対向きのピストンである。爆発タイミングと同期生が全体システムとしての問題点である。燃焼室の設計及び排気システムについては、従来型エンジンにおいて使われている技術が応用できる。しかし、噴射タイミングを定める制御アルゴリズムが開発されねばならない。もし電子制御式燃料噴射及びエンジン管理システムが開発されれば、必要とされるレベルの制御は可能となるだろう。