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従って船舶の安全運行は重要な事項であり、その為には操船手段、船舶の建造、装備と機関システムなどの改善が、必要であろう。

現在では局度の資格と経験を持った遠洋航海のエンジニアが世界的に不足しており、この状況はこれからも継続する。この問題は過去数年に亙って、近代船舶に装備された機器の範囲と複雑さが増していることと複合化されている。従って、その操作と保守のあらゆる面に就いて習熟する事を期待するのは不合理である。

船員の不足と乗船員の高い賃金コストを埋め合わせる為に、運航者は船上での自動化とコンピューターの容量を増加させる選択をした。この政策はそれ自体において、更に複雑なシステムと遠洋航海のエンジニアに必要とされる技能の変化をもたらした。それは又、センサーや他の電子部品に関連する、より大きな信頼性の問題と、安全や環境を維持すると言う潜在的な問題とを、顕在化した「1」。

 

3.5 システムの保守管理

舶用動力・推進システムは、設計効率と性能が確保されるように、その寿命期間を通して、継続的に保守されねばならない。排出物を減少させ、燃料消費率を改善する為に採用された方法も、設計で意図されたように操作する限りにおいて有益である。

中速ディーゼル産業は、製造者が準備したシステム保守管理パッケージに、供給動力プラントをリンクすると言う、その事業過程の変化を経験した。このやり方は、システム性能と保守に対する責任を、エンジン供給者に手渡し、故障発生に対する財務上のペナルテイーを、一定の目標の範囲内に収めるものである。例えば、一つの動力装置についての故障と故障の間の平均時間、燃料消費率、アヴェイラビリチイ等を目標として使用する事と、これらはより効率的で信頼できるシステムの生産と保守を確保する為の刺激として作用する。動力装置の保守管理計画が成功裡に実行される為には、統合状態モニタリング、故障診断そして保守の意思決定システムが確立されていなければならない「8」。

 

4. 技術開発

海運の環境保持性の改善が求められるようになったことから、数多くの新エンジン設計に関る研究開発が行われてきた。様々な開発段階にあるエンジン・コンセプト・設計について、その幾つかを取り上げて以下述べることにする。

 

4.1 往復動機関における湿式NOx低減法

燃焼室に水を注入する事は、NOx生抑えるのに、非常に効果的な方法である。水は燃焼過程において気化し、火炎の最高温度を下げ、シリンダー内のホットスポットを冷やす。この種の所謂、“湿式”NOx低減法に関する技術は、おおざっぱに言って以下に述べる3分野に分けられる。

 

4.1.1 燃料−水エマルジョン

Fig.1に示すように、燃料−水エマルジョンは、燃料噴射ポンプの前段において機械的な方法によって作られる。エマルジョンは、燃料だけを使う普通の運転の場合と同じ燃料噴射システムを使用して、燃焼室に噴射される。エンジンや燃料の種類にも依存するが、燃料に20%の水を加えることによって、余分な燃料消費なしに、20%のNOx低減が得られる。

 

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Fig.1 Fuel-Water Emulsion Delivery System

 

燃料−水エマルジョン・システムの限界を決める要因は、エマルジョンを送り出すシステムの最大輸送能力であり、この為に全負荷時において、およそ20%のNOx低減というのが、実際的な限度となる。水を20%以上加えることも可能であるが、Veljiら「9」が示しているように、その為にはシステムをかなり大きく設計変更しなければならないし、燃料消費の増大にもつながる。燃料−水エマルジョンの採用は、NOx低減効果に加え、特に低負荷時に、エンジン・スモークの不透明度を少なくし、CO排出も減少させる。しかし、HCと煤塵の排出はやや増える。

 

 

 

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