3.1 燃料消費
動力・推進装置の燃料消費の低減は、大気中への全ての有害廃棄物や化石燃料の枯渇を減少せしめ、LCAにかなりの効果を持つであろう。船舶の運航速度、船体と推進の設計は、抵抗を最小限にする事が出来、燃料消費を減少させるのに非常に重要である。将来の海運による輸送チェーンの利用においては、抵抗を最適化して燃料消費を改善するために、高速に対する要求と、貨物運搬容量とを、釣り合わせる必要がある「6」。
舶用ディーゼル機関の燃料消費率は、1973年の石油危機以来約20%から25%まで減少された。そして道路運送用のディーゼル機関についても、同様の改善がなされた。しかしながら、この割合での燃料消費率の改良は、より厳しい排出規制の導入の為に、将来においては非常にありそうも無い事である。特定の排出ガスを減少させる為に取られる方策は、エンジンの燃料消費にマイナスの効果を持つ傾向がある「4」。
3.2 燃料の品質とSOxの排出
いずれの動力・推進装置の性能においても、隠れた要素は使用する燃料の種類と品質である。北欧の海域において運航されている船舶では、環境への悪影響を減少させようとする要求により、運航者が重質油の使用を止め、ディーゼル油或いは軽油を大幅にようになっている「6」。蒸留油に対する全体的な要求は、Liddyによれば、単に舶用部門に限らず、あらゆる部門に亙って増加している「7」。燃料油に対する総需要は殆ど一定であると推測されるが、製油所の生産量には潜在的な不均衡があり、このため残査の変換工程においては、更なる増産が必要となるであろう。
酸性化を低減させる為に、船舶からのSOx排出を減少させる方法として、燃料の硫黄含有量の抑制が導入された。MARPOL Annex VIは舶用燃料の硫黄含有量に、4.5%の世界的制限を定め、更にSOxの特定排出抑制地域(SECAs)において、制限を1.5%に減少させている。4.5%の制限は、今日のバンカーでこの水準以上の油が引き渡し量の2%よりも少ない為に、海運産業にとって問題とはならない。しかしながら、SECAsにおける1.5%の硫黄の制限は、この水準以下の油が現在のバンカー引き渡し量の4%よりも少ない為に、重大な関連を持つであろう。軽油、低硫黄重質油、ディーゼル油、重質油は、それぞれ硫黄分が0.5%、1%、1.5%そして3.5%となっている「6」。低硫黄の燃料は入手可能であるけれども、内陸の使用者によって殆ど消費されているので、海運産業は比較的少ない量に対して、競争によるプレミアムを支払う用意が無ければならない。
3.3 NOxの排出
NOx排出の低減技術は二つのカテゴリーに分ける事が出来る。“第一の方法”は、シリンダー内の燃焼過程の特性を変えて、生成されるNOxの量を減少させるものである。そして“第二の方法”は排気ガスの後処理に焦点を合わせるものである。選択性還元触媒(SCR)などの第二の方法は、著しいNOxの低減効果(85%−95%)が見られるけれども、現時点では、空間、重量及び保守への要求がそれほど厳しくない陸上での使用により適している。其処ではきわどくはないからである。それらを使用する際は、尿素の供給が必要であり、尿素の生産はNOx排出を伴う為、LCAの観点から、その効用に疑問を呈する意見も出ている。
IMOによれば、船舶に装備される130KW以上の出力を持った全ての機関は、EIAPP証書を必要とする。非常用ディーゼル機関(発電機、消火ポンプ等)は除外されている。これらの証書は、全船舶を包括しているIAPP証書の基となっている。この証書は旗国当局又はその代理として船級協会によって発行される。
機関モニタリングと排出規制は、船級協会にとって益々厄介な作業領域と囲となっている。排出物の測定は複雑でコストの掛かる作業である。新造船舶にNOxの低減技術を義務づけているのも、その一つであるが、遠海航路においてSCRプラントのようなシステムの使用を確保する事は、おしなべて更に困難である。
3.4 安全
座礁或いは船舶の喪失のような海難事故は、社会的かつ環境上、極めて大きな影響を及ぼす可能性がある。