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(b) 湿り空気を用いるタービン(HAT)

HATコンセプトは、ガスタービンの熱効率を上げ、経済性を高める為に採用される可能性がある。圧縮機からの空気は、ガスタービン燃焼室の前段で、コラム内において速やかに加湿される。こうしてサイクルに水を入れることにより、タービン内の流体流量が増し、出力率及び全サイクル熱効率が向上する。加湿は排ガスからの余熱を用いて行われ、加えられる水の量は、主に運転条件と燃焼火炎の安定性に依存している「26」。HATサイクルのテストは、中間冷却器付き航空タービンを使って行われたが、燃焼器に関して、かなり大きな変更が必要となっている。

 

4.5 電気への変換

プロペラ直結型の舶用デイーゼルエンジンは、デイーゼル電気プラントと比べ、高効率で、初期コストも低いであろう。しかし、デイーゼル電気システムの場合は、遥かに柔軟性のある器機配置が可能である。充分統合化された電気推進システムと言うコンセプトが、特に軍艦やクルーズ船において、ポピューラーな物になってきている。現代の軍艦は、大小の主機を組み合わせて使用することにより、通常時及び高速時の運転を効率の良いものにしている。非常によく見かけるものとして、2ケの高速用機関と2ケの通常用機関を機械的に推進器に接続するとともに、沢山のデイーゼル発電機を設けたシステムがある。これは10台ほどの異なったタイプの主機を船に装備している場合がありうることを意味している。充分に統合化された電気推進システムを使う場合は、一般的で良く出回っている主機を少数台使用して、推進動力及び補助動力を得ることが出来、船に設置する主機の数と種類を減らすことが出来る。

クルーズ船は、照明、エアコンその他のホテルとしての電力需要が大変大きく、また乗客の為のスペースを、最大限にする必要性から、機械配置が決められている。全ての主機を、他には使いようの無いスペースに置くことによって、収入を生み出す空間を増大させることが出来る。プロペラーの駆動に電気モーターを使うことで、主機を軸ラインから離れた位置、例えば船楼など高い位置に置けるようになる。

推進を完全に電気で行うことによって、主機をより高い効率で運転することが出来る。従来の機械式推進システムでは、プロペラー回転数が主機回転数に比例するから、船が全負荷でない場合は、そのエンジンのとって最も効率の良い回転数・出力レンジから外れた点で、運転されることになる。プロペラーとエンジンの機械的接続を無くすことで、プロペラー回転数はエンジン回転数から独立となり、エンジンを常に最も効率の良い回転数で運転することが出来るようになる。部分負荷で運転するときは、運転する主機の数を減らし、残りの主機をそのままフルパワーかつ最大効率に近い点で、運転し続けることが出来る。

軍艦での使用では、船が深刻なダメージを受けた場合に、切り離して独立に運転できるよう、船内を幾つかの独立した区画に分割しておくことが望ましい。電気推進システムはこうした方針に非常に適しており、異なった区地域に主機を配置して、夫々を主電力供給パスによって繋ぐようにすることが出来る。通常時の運転では、電力は発電機のどのような組み合わせによっても供給可能である。システムにダメージが生じた場合には、影響を受けた区画は、残りのシステムに影響を与えないよう、分離することが出来る。Fig.6に、十分に統合化された電気推進システムを装備した軍艦の、典型的なシステム構成を示す「27」。

 

 

 

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