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4.1 往復動機関における湿式NOx低減法

燃焼室に水を注入する事は、NOx生抑えるのに、非常に効果的な方法である。水は燃焼過程において気化し、火炎の最高温度を下げ、シリンダー内のホットスポットを冷やす。この種の所謂、“湿式”NOx低減法に関する技術は、おおざっぱに言って以下に述べる3分野に分けられる。

 

4.1.1 燃料―水エマルジョン

Fig.1に示すように、燃料―水エマルジョンは、燃料噴射ポンプの前段において機械的な方法によって作られる。エマルジョンは、燃料だけを使う普通の運転の場合と同じ燃料噴射システムを使用して、燃焼室に噴射される。エンジンや燃料の種類にも依存するが、燃料に20%の水を加えることによって、余分な燃料消費なしに、20%のNOx低減が得られる。

燃料―水エマルジョン・システムの限界を決める要因は、エマルジョンを送り出すシステムの最大輸送能力であり、この為に全負荷時において、およそ20%のNOx低減というのが、実際的な限度となる。水を20%以上加えることも可能であるが、Veljiら「9」が示しているように、その為にはシステムをかなり大きく設計変更しなければならないし、燃料消費の増大にもつながる。燃料―水エマルジョンの採用は、NOx低減効果に加え、特に低負荷時に、エンジン・スモークの不透明度を少なくし、CO排出も減少させる。しかし、HCと煤塵の排出はやや増える。

このエマルジョン方式は、幾隻かの船で実際に永年にわたって利用されて来たものであるが、将来改善が待たれる問題も存在している。それは、ピストンリング、シリンダライナー及びバルブの腐食・摩耗の増大、燃料噴射システムの耐久性低下、潤滑油の劣化である。システムの設計や材料を変更する可能性も含めて、将来の研究が望まれている。

 

4.1.2 水噴射

水を燃料と別のノズルを使って、直接燃焼室に噴出する方法、単一燃料噴射弁を通して、燃料と水を交互の噴射する方法、給気マニホルドに噴出する方法が考えられる。

 

(a) 別個のノズルを用いた直接水噴射

デュアル・ノズル・システムを使って、水と燃料を別々のタイミングで噴射させ、NOx低減の最適化を図ることが出来る。燃料噴射前に水を噴射し、シリンダ内の空気を事前に冷却しておく。Kohketsuら「10」が示しているように、水噴射が燃料噴射と一部オーバーラッピングするようなタイミングにすることで、非常に大きなNOx低減効果を得ることが出来る。

この技術は燃料―水エマルジョンにより簡単であるが、噴射された燃料を微粒化させると言う点では、エマルジョンのような効果を持たない。しかしエマルジョン燃料と比べ、噴射システムのエマルジョン輸送能力を高めなければならないと言った問題はなく、エマルジョンの安定性という問題も無いため、より多量の水を入れることが可能である。「11」このやり方により、50%-60%のNOx低減が報告されており、HelsingborgのSilja SymphonyやAuroraと言ったフェリーにおける実船試験の結果も、この事を照明している。「12」

 

 

 

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