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そして“第二の方法”は排気ガスの後処理に焦点を合わせるものである。選択性還元触媒(SCR)などの第二の方法は、著しいNOxの低減効果(85%-95%)が見られるけれども、現時点では、空間、重量及び保守への要求がそれほど厳しくない陸上での使用により適している。其処ではきわどくはないからである。それらを使用する際は、尿素の供給が必要であり、尿素の生産はNOx排出を伴う為、LCAの観点から、その効用に疑問を呈する意見も出ている。

IMOによれば、船舶に装備される130KW以上の出力を持った全ての機関は、EIAPP証書を必要とする。非常用ディーゼル機関(発電機、消火ポンプ等)は除外されている。これらの証書は、全船舶を包括しているIAPP証書の基となっている。この証書は旗国当局又はその代理として船級協会によって発行される。

機関モニタリングと排出規制は、船級協会にとって益々厄介な作業領域と囲となっている。排出物の測定は複雑でコストの掛かる作業である。新造船舶にNOxの低減技術を義務づけているのも、その一つであるが、遠海航路においてSCRプラントのようなシステムの使用を確保する事は、おしなべて更に困難である。

 

3.4 安全

座礁或いは船舶の喪失のような海難事故は、社会的かつ環境上、極めて大きな影響を及ぼす可能性がある。従って船舶の安全運行は重要な事項であり、その為には操船手段、船舶の建造、装備と機関システムなどの改善が、必要であろう。

現在では高度の資格と経験を持った遠洋航海のエンジニアが世界的に不足しており、この状況はこれからも継続する。この問題は過去数年に亙って、近代船舶に装備された機器の範囲と複雑さが増していることと複合化されている。従って、その操作と保守のあらゆる面に就いて習熟する事を期待するのは不合理である。

船員の不足と乗船員の高い賃金コストを埋め合わせる為に、運航者は船上での自動化とコンピューターの容量を増加させる選択をした。この政策はそれ自体において、更に複雑なシステムと遠洋航海のエンジニアに必要とされる技能の変化をもたらした。それは又、センサーや他の電子部品に関連する、より大きな信頼性の問題と、安全や環境を維持すると言う潜在的な問題とを、顕在化した。「1」

 

3.5 システムの保守管理

舶用動力・推進システムは、設計効率と性能が確保されるように、その寿命期間を通して、継続的に保守されねばならない。排出物を減少させ、燃料消費率を改善する為に採用された方法も、設計で意図されたように操作する限りにおいて有益である。

中速ディーゼル産業は、製造者が準備したシステム保守管理パッケージに、供給動力プラントをリンクすると言う、その事業過程の変化を経験した。このやり方は、システム性能と保守に対する責任を、エンジン供給者に手渡し、故障発生に対する財務上のペナルティーを、一定の目標の範囲内に収めるものである。例えば、一つの動力装置についての故障と故障の間の平均時間、燃料消費率、アヴェイラビリチイ等を目標として使用する事と、これらはより効率的で信頼できるシステムの生産と保守を確保する為の刺激として作用する。動力装置の保守管理計画が成功裡に実行される為には、統合状態モニタリング、故障診断そして保守の意思決定システムが確立されていなければならない。「8」

 

4. 技術開発

海運の環境保持性の改善が求められるようになったことから、数多くの新エンジン設計に関る研究開発が行われてきた。様々な開発段階にあるエンジン・コンセプト・設計について、その幾つかを取り上げて以下述べることにする。

 

 

 

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