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(b) 単一ノズルを用いた直接連続水噴射

この技術には、1動作で水と燃料を燃焼室に噴射できるような機能を持った燃料噴射弁を設計することが必要となるFig.2はこうした設計の一例である。燃料噴射の間の期間に、水は図の部品中央部を通って下り、更に細管部を通って周囲の燃料の中に入る。水の入った分、同じ体積の燃料が噴射弁内から押し出され、燃料供給管に戻される。噴射ポンプが燃料を供給し始めると、噴射弁内の圧力が上がり、チェックバルブが閉じ、燃料がノズルを通じて、燃焼室に噴射される。噴射の順序はそれ故に、1ケのノズルから燃料―水―燃料となる。毎回の噴射で放出される燃料中の水の割合は、水を燃料中に送り出す細管の位置及び長さによって変えることが出来る。また、これは水を注入するタイミングにも依存する。

 

(c) 給気マニホルド中への水の噴射

給気マニホルド中へ水を噴射することは、最も簡単な湿式NOx低減法であり、Nichollsら「13」が詳細に議論しているように、NOxと燃料消費率に関して、直接水噴射と同様の効果を持っている。水は一部レシーバー内において気化し、残りはシリンダー内で気化する。このNOx低減法は、非常に有効であるが、ピストンリング、シリンダライナー及びバルブの腐食・摩耗、潤滑油の劣化の問題は残る。

 

4.1.3 湿り空気を用いる原動機

湿り空気を用いる原動機(HAM)はNOx低減に有望な技術として開発がすすめられている。「11」「12」このコンセプトは、排熱を利用して過給空気湿度を100%まで高めると言うものである。これはFig.3のように、空気冷却器の代わりに特別の加湿コラムを入れることによってなされる。このコラヌの前段で、水は温まった冷却水及び排熱によって、およそ80℃まで加熱される。更にこの水はコラムの中で約200℃の過給空気の熱によって気化される。

直接水噴射や燃料エマルジョン法と比べ、この方法はより多くの水、燃料の1―3倍の量の水をエンジンに入れる事が出来る。HAMコンセプトでは、過給空気の温度は通常より高めであるが、注入する水によって熱的な調節を行い、圧縮行程後の空気温度は同じになるようにすることが出来る。この方法によりNOxを50%から70%程度低減することが出来、燃料消費量は同じか或いは僅かな変化に止める事が出来る。

NOx低減の主原因は、空気の熱容量が大きくなることによる温度の低下と、酸素濃度の低下によるものである。結果として燃焼温度分布はより均一なものとなり、ホットスポットが抑えられ、NOxレベルは大幅に減少する。気化させた水を燃焼空気に放出する仕組みであるから、海水をシステム内で蒸留して用いることができる。供給システムが連続的に海水を送り出す為、ミネラルや塩の沈殿は問題にならない。

 

4.2 往復動機関におけるその他の開発

4.2.1 ミラーサイクル

これは4-ストロークサイクルに若干の変更を加えるものであって、ピストンが下死点に達する以前にシリンダへの空気吸入が終了するよう、バルブタイミングを変えるものである。これによって生じた膨張過程により、シリンダ内の空気は冷え、プロセスの温度は低下し、NOxが減少する。圧縮圧力、そしてそれ故に燃焼圧力は低下し、エンジン部品への機械的負荷は減少する。この技術を実際に用いる場合は、過給器及び空気冷却器の役割が大きくなる。必要な条件は、過給器が高い効率(少なくとも70%)を持つこと、及び高い圧縮比(少なくとも4:1)を持つことである。

 

 

 

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