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これらのLCA研究調査は、立法者、監督機関、運航者及び研究者が、運航変更や代替の技術の適用によって、取り組む必要のある重要な問題に注意を集中させる助けとなったし、又そうでありつづけるであろう。1つの輸送チェーン全体についてのLCAを実施する事によって、又、機関システムの詳細な知識をもつことによって、そのチェーンの環境上の性能を最適化する事が可能である。更なる研究によって、輸送チェーンの経済的及び環境上の性能の最適化が推し進められている。

貨物と旅客の動きは全旅程に亙って、輸送の手段のチェーンを含んでいる。代替の運送チェーンにる移動距離は、同じものではなく、それゆえに、環境上の性能は、チェーンの出発点と終点との間において、評価されねばならない。環境影響の関数単位は、貨物については、トン当り、立方メートル当り、貨物の単位当り、人々の動きに就いては旅客当りでよい。「3」

影響カテゴリーを評価するのに、ExtemE評価方法を使用することによって、煤塵、NOx、CO2が、使用された技術或いは燃料に関係なく、環境上の損害の90%以上の原因となっているとの結果が得られた。コスト見積もりによれば、NOxの排出は他に比べて著しく高いので、CO2排出よりも高い優先権を与えねばならない。社会が汚染と資源消費の両者に特に経費を支払う用意が有る事を前提にして、EPS評価を実施すると、異なった結果が選られ、燃料消費とCO2の排出が、最も重要な問題となる。それに続いて、煤塵、NOx、SOxの順となっている。これらの評価モデルは汚染の場所を考慮に入れていないが、若し入れていたとすれば、船による汚染のかなりの部分は、公海上で起こっているので、環境への影響は減少するであろう。

全体論的な或いは“揺り篭から墓場”までの取り組み方法が、舶用産業の全ての影響を分析する為には必要である。船舶とその装備品に就いての、揺り篭から墓場までの分析は、その生涯をとうした建造、運航、解体の全局面が含まれる。包括的な評価には、天然資源の利用の検討も含まれる。数々の事例研究から、鉄鋼生産を考慮に入れれば、船舶建造の結果として、COの排出と固形の廃棄物の発生が、最も重大な問題である事は明らかである。しかしながら、遥かに重大な環境影響が船舶の運航の局面において存在するそれは最も大きな環境影響を引き起こす、船舶の動力・推進に関連するエネルギー資源の消費と、燃焼排出物によるものである。船舶の解体期間中、最も著しく有害な環境上の問題は、発生する固形廃棄物である。鉄鋼のリサイクルを通じての、COの消費によって、建造中に発生するCOの多くを埋め合わせる事が出来る。「2」

最初に設計上決定しなければならない一つは、使用される材料の選択であり、リサイクルの可能な範囲を決める事が益々重要になるであろう。何故ならば、原料を入手し、加工処理し、生産することの影響は、非常に大きいからである。自動車産業においては、事実上全ての自動車の構成部品を、リサイクル使用する事が大勢となりつつある。舶用建造物と器機は、それらの建造において、非常に大量のエネルギーを必要とし、部品の再使用は、概念設計の段階で考慮されるべきである。「1」

船舶上での燃焼過程は、燃料生産チェーンと比較して、CO2、CO、NOx、SOx、及び煤塵発生の90%以上を占めている。ライフサイクルの全ての局面に亙っての廃棄物の発生は、燃料生産過程において発生するそれと共に、非常に重要である。船舶は長期の運航寿命を持っているので、他の運輸様式と比較して、低い環境影響を確実にするような、費用効果の大きい技術と運航手段を、適用する事が必要である。Johnsen et alは彼らの調査から、燃料の消費とNOxとSOxの排出削減に向けて、努力の集中が継続されるべきであると結論している。「2」

EUの現行と計画中の道路輸送に対する排出物規制は、CO、NOx、HC及び煤塵をかなりの程度減少させることを含んでいる。「4」同様な圧力を舶用産業が受けるようになるであろうと、示唆する事には余り論争の余地はない。

 

 

 

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