付5 離着桟操船援助装置の安全評価資料
5-1 製造メーカーとして離着桟援助装置の安全に関する機能の概要
1) 離着桟援助装置とは
船舶を離接岸する時、操船渚はバウスラスタ(またスタンスラスタ)、左右舷のCPPおよび舵等の各アクチュエータをそれぞれ独立して操作することにより船体の制御を行いますが、潮流、波、風等の外乱に対し、絶えず推力や舵角を調整する等の複雑で頻繁な操作が要求されます。また、操船以外にもロープ操作の為の甲板員への指示、他船や岸壁との間隔の確認等、多数の情報処理も行わなければなりません。
離着桟援助装置はこれらの独立した操作を統合した装置で、操船者は複雑な操作による疲労、緊張より解放され、人間でなくてはできない高度な判断に集中できるため、安全性が向上するとともに、効率的な離接岸作業を行うことができます。
現在、ジョイスティック操船装置が一般船舶にも普及しはじめており、離着桟援助装置としてジョイスティック操船装置の製造を例に安全に関する機能を紹介します。
2) 装置の構成
一般的にジョイスティック操船装置は、船体方位、位置、船速、および風速等の船舶外部の状態を取り込むインターフェース部と、各アクチュエータの翼角や舵角などの状態を取り込むインターフェースがあり、操船者の指令に対してその情報を元に最適化された指示値を各アクチュエータから出力させます。各アクチュエータ出力により刻々と変化する状態を次々に処理していくループバック型制御になっています。
離接岸時には船体を横方向に移動させる必要があるため、横方向の推力を得るための最低限のアクチュエータ構成が必要となります。
3) 装置の機能
ジョイスティック操船装置に備わっている機能を説明します。ただし、すべての装置に以下の機能が備わっているわけではありません。
(1) 横移動 船体を横方向に平行移動させる。(完全に真横移動ではなく若干同時に前後にも移動するものもある)
(2) 斜航 斜め方向に前進もしくは後進し、移動する。(平行移動しながら前後方向に異動できるものもある)
(3) 旋回 回頭運動を行う。(旋回の中心を船首、船体中央、船尾を選択できるものもある)
(4) 方位保持 外乱等により船首方向がズレても、設定された方位にもどる。(その場での方位保持以外に、横の平行移動やオートパイロット的に併用する場合もあります)
(5) 方位変更 船首を設定した方位に回頭させ、その方位を保持する。
(6) 位置保持 GPS等からの情報を元に船体を一定の位置に保持する。
(7) 位置移動 位置保持状態から指定した位置に移動する。
4) 装置の導入
A. ジョイスティック操船装置の導入計画から運用までに行う作業内容の例を紹介いたします。
(1) 仕様協議 船舶の使用状況を想定し、横移動速度や耐風力性能から機器の構成やアクチュエータ能力の仕様を決定する。また、安全に関する操縦位置および各アクチュエータの切換条件等も協議する。
(2) 装置設計 船体形状、アクチュエータ配置や能力から、船体運動に関する指令値データおよび制御プログラムを作成する。シュミレータを使用し擬似的に操船し船体運動の確認を行うこともある。また、通常操船からの切換装置や故障時のアラーム表示等の制御回路設計も行う。