4-7 リスク情報に基づく技術管理
技術のリスク認知とコミュニケーション
<動燃のもんじゅ事故>、<名古屋空港におけるエアバス・ゴウアラウンドモードにおける事故>、JCO問題、雪印問題・米国大統領選挙開票プロセス、油濁処理後の対策問題のなし崩し、炭酸ガス排出問題等の発生防止・影響拡大対策については、各人・組織体の切口・判断により・それぞれから問題解決のプロセス提言がありうる。これらを時代の通念・将来性を考慮しつつ取り纏め、発言して、海事の世界の設計等にフィードバックしていくことが大切である。発生している各種のよき社会事故教訓をとかく他人事のような態度をとって、所属する組織に番が回り来るまで静観が常であろう。積極的・継続的な許容安全についての取り組み、時代に応じた安全技術の視点・意見統一、その見解提示とそのフォーローアップは、海事世界に対する一般社会からの信頼性醸成のため、平素からの努力は必要である。また安心・安全は、関係者の適切なるリスクコミニュケーションにより明確になり、確保される要因が大きい。この側面の取り組みについては今後の課題である。上述の事故の中で、どこにてもよく散見される例として次の2例を挙げてみる。難解な問題であるが解決していく必要がある。
1) 動燃の<もんじゅ>事故 [001]
これと同形式のフランスのスーパフェニックスにおいて既に何回ともなく、二次配管系の温度計の「さや管」が共振によりナトリュウムがもれている事故の事実がある。設計変更により、カルマン渦による共振をしにくくしている。しかし、このことは<もんじゅ>開発前に既に動燃はフランスからの通知を受けていた事は報道されている。<もんじゅ>の開発の前段階である<常陽>は「さや管」に段差はなく滑らかなテーパー状になっていた。しかし<もんじゅ>の実用段階の場合は段差有りの「さや管」に変更されていた。且つこの「さや管」の採用について一般外部者からの疑義が提示されても、プロ集団の動燃は「フランスの技術が低級だから発生した」と事故前に説明していることが報道されている。この通知の事実がありながら、その解析をせず、動燃はそのさや管の「承認図面」を堂々と承認していた。しかし事故が発生したら、責任は図面を作成した下請けの製造メーカーの設計ミス・責任として、自分は知らぬ存ぜぬと言う態度をとっている。技術者、管理(者)のおごりであろうか。決定された事項への外部からの提言についての再考察と議論になれていない日本人の素質の問題であろうか。
権威ありそうな動燃の日常は技術と遊離したレベルの業務の実態であると判断される。これと同様なことは、一般的に、権威ありそうな各種規格・規則において実績上からそのあり方の変更提言がなされて久しい。動燃の事故関連の有様と規格類作成のプロセスのあり方が同一線上であると社会から見られぬ努力は必要である。
2) エアバスA300ゴー・アラウンド・モードの事故/名古屋、1994年 [002]
この事故の前である1991年のモスクワ空港等で、類似の事故が既に3件発生していた。