船舶運航のごとき複雑なシステムは完全自動化の為のインフラが未だなく、マンマシンシステムである。上述の如く独立した安全関連系装置はなく、支援システムの機能(ユーティリティー)の有用性とその機能の使い易さ(ユーザビリティー)で安全機能能力が評価・レベル化されるのが現状である。このためには各種自動化機能(ユーティリティー)と人間との接点であるマンマシンインターフェースの優秀性(理解し易い知識ベースと、判断情報提供を含めた優れたユーザビリティー性)が安全確保上重要な視点である。各種状況認識を頭脳にて行う在来のレベルには、人間に基本的に帰属するエラーが、取りまく環境とのインタラクションに於いて事故へと展開する。従って、安全は経済性を含めてマンマシンインターフェースの優秀性に依存して、エラーの影響とその拡大を回避でき、安全を確保する設計方法が専門職業の使用者対象のシステム設計として妥当があると思われる。この領域が安心領域と重複してくると推定される。
現場のシステム使用者と一般社会は、安心という観点を含めて安全性を考えている。安心は個別的、非論理的側面を含んでいるが、複雑なシステムにたいしてはより主観的な表現である安心を含んだ安全性で対応していくのが、より社会感覚に近い。社会に於ける安心はストレスのすくない安全を言及した捉え方であろう。
さて原子力発電の安全性はどのゾーンにあるか。専門家、関係者は安全領域/SZであると、大衆は不安心・危険領域/DZであるとみている。安心を得る為の努力として、技術の透明化と危険性情報認知の共有化が必要であり、ここにおいてリスクコミニケーション手法が不可欠である。日本に於けるこの情報はトップダウン方式で流れている。安全とその上位にある安心は絶えず何が危険であるかの認識の上に構築される。地球・人類のライフサイクルからすると現状のあり方は如何であろうかが安心と言う側面から問われている。日本学術会議、安全工学専門委員会報告書(平12年3月27日)等によると、安心(感)の説明を次の如く述べている。
「自分自身に損害を与える事故が発生しない(他人の行為等自分自身に無関係の原因により自分に事故が降りかかるばかりでなく、自分が事故の起因源となり、自損したり、あるいは他人に損害を与えたことで自分が非難されたり訴えられるという損害が発生しないことを含む)という感情。または仮に被害が生じても損害が最小限に食い止められる対策がなされている。損害が医療・治療、保険等で填補され、事故前の状態に戻ることができるという感情である。安心はそれを感じる人の心理量であり、その評価には個人差がある。安全の程度が向上したから、安心の量は直線的に増加するものでない。」
一方、海上システムに於ける使用者の安心は、システムの機能(ユーティリティー)とユーザビリティーの優秀性に基づく安全性を有するシステムが故障した場合、容易にそれが検知され、手動切り替えがスムースに実施出来て、監視が継続出来る状態であると現場経験者等により理解されている。ALARPモデルである逆三角形の頂点付近である受容性レベルが安心領域であらう。グレーゾーン領域は社会価値観に依存し、許容と判断されるかどうかの領域であり、システムと方策に依存する安全領域と判断される。ユーザビリティー評価解析は企業にとってコストが掛かる問題であるので、不慣れな部分もありあまり積極的努力に躊躇する部分である。コンピュータソフトはかなり慣れるまでストレスの多いものであるが、それの解決のためのミドルウェア(MW)開発が期待されている。その開発中に次ぎのOS、若干のバージョンアップのアプリケーションが発表されて、本格的MW開発の阻害となっている。例としてマイクロソフトの相変わらずの一人勝ちであるが、一般ユーザーはいつまでも期待しながらその使い難さに泣かされている。ユーザビリティー改善・開発・評価は国立の有能な研究機関等に依頼(アウトソーシング)するのが合理的かつ賢明であろう。