4-6 安全と安心
安心は最近日本学術会議において「安心を目指した安全な物作り」という設定をしている。従って、安心が工学分野のカテゴリーに導入されたといえる。現場乗組員と一般社会ではよく安心について言及している。用語として安全との関連・区別が明確ではなく、整合性が取れていない。従って、各方面にて混同して使用されている。従来の安全の如く単なる枕言葉的に使用され、メディアの使用に対して共通性を保持する必要がある。この側面に於いて安心についての考察・意義・定義等の議論が今後望まれる。安全は許容・条件設定付設計環境等(経済的合理性を含めてこれらを許容といっている)により工学的対象としてある程度捕らえることは可能である。ある程度と言う意味はシステムの大部分に於いて絶対的手法に基づく安全はありえないからである。安全を「許容リスク」の概念に於いて考える場合、ある程度のリスクは特定できるので、事前に方策を取れる。しかし経済性と技術の限界があるので、いわゆる限界がある合理的な設計手段しか取れない。従って、安全の方策における意思決定はその時代の社会環境に依存した主観的判断にならざるを得ない。
本質安全が確保できない場合、各種システムで採用されている安全方策を次の4種類に分類される。
(1) 工作機械類の如く、機械と人間の間に空間とタイムラグを設定しておき、危険を感知したら、または安全を確認できない場合、最終的に機械を止めるという装置停止型にて安全を確保する方法がある。鉄道型交通システム、その他においも基本部分おいてはこの概念を取り入れているケースが多い。(停止確認型安全)
(2) ボイラとその燃焼装置は完全自動化が進み、保守時以外は人間の手を通常必要としていない。制御系(BCS)と被制御系(EUC)に加え、これらと独立した安全関連系(SRS)が存在する。常用の制御系が失敗側の故障になった時は、信頼性に依存した安全装置(安全弁)が作動して装置等の破損を回避して安全を確保する方法である。(安全装置の設置)
(3) 飛行機は離陸したら(稼動中)、信頼性の技術により目的地に着くのが目的遂行となる。即ち、多層防御の信頼性技術により安全を確保する方法である。(信頼性・冗長性技術)
(4) 複雑システムにおいフェールセーフの概念は採用不可能である。船橋航海システムの例においては、取りまく環境(交通、地形、自然環境、時間的制約)は動的であり、かつ回避のため3次元運動が取れぬこと、且つ時定数の大きな物体を制御する困難性がある。沿岸輻輳海域に於いて、危険であるからその都度船舶をとめていてはシステム自体が成立しない。また相手船の安全阻害要因となる。(有効な支援システムと時間的余裕の創出)
動的な装置産業のシステムにおいては、安全性は経済性の観点から如何に有用であるかという視点にて捉えていくのがより現実的な姿である。すなわち安全の視点は稼動している状態でのシステムを継続していく安全の在り方を対象として捉えるのが現場乗組員の感覚からすれば自然な方法である。停止することによる安全の議論は実務的ではない。