(10) 評価手法の考察
・複雑なマンマシンシステムが主であるので客観的評価はむつかしいことが多々ある。従い定性的数量化評価が実際的である。海外ではよく使用されている方法である。客観的評価と比べどちらが優れているか議論の多いところである。システムの実用段階にては一般解(教科書的評価。統計データの収集過程においてかなりの主観がはいるデータの信頼性に問題があり、集計方法によっては客観性に疑問がある)ではなく、特殊解(システムを安全管理システムの異なる各企業・現場における適用)となると一般的に定性的評価がより適している場合が多い。
真実は必ずしも客観的であるとの判断ではなく相対的・主観的でもある。この視点が事故の因果関係を取り扱う上で重要である。リスクアセスは各々単独である技術、人間、組織の科学・工学の純粋な問題範囲でなく、複合する上位階層のサイエンスである。不十分なる客観的データにこだわっていると、リスクアセスメントシステムの利用阻害要因となりうる。汎用的なデータ〔単なる表面的な事故の集計の平均値〕をつかったモデルにる解析方法のみでは社会に対するリスクコミニュケーションと意思優先順位決定における情報提示に限界があり、説明性を欠く。システム、管理、安全文化等の差異により、リスク(評価)は時間的・空間的に再現性が見られにくく、非常に主観的なものであることを理解しておくべきである。従って、企業・現場の安全管理システムの影響を組み入れていないデータによる解析は実務的でないと反省されている。安全管理システムの導入の有無によりリスクの減少・増加は1/5の減少〜10倍(引用資料:[003])、又は故障確率として300倍程度の差異が指摘されている(引用資料:[006])。複雑なシステムに対して、定性的解析等にクレームを提示している古典的な立場があるが、実務段階に於いてはそのうち黙り込むであろう。