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潜在するリスクに対して、運用段階における有効性維持には限界がある。JCO事故例から判断するに、人間の信頼性に依存する方法論は各方面にて明かに限界がきている。海上にても同一船にヒューマンエラーに基づく同一事故さえ発生している。最早個人、パイロットの能力では対応しきれず、潜在的に許容できないハザード(巨大船における危険物量)が危険状態化している状況である。巨大船のリスクの有効且つ定期的な改善見直しが行政にて実施されていない。定期的レビューはマネージメントの基本である。

(6) 背景と国際的安全システムの動向

・安全概念の差異

日本 損傷等がないこと

欧州 証明された安全性

ISO 許容安全、社会の価値観に基づく。

・安全の主要国際規格

ガイド51、リスクアセスメント(ISO14121)、機械安全(ISO12100)

機能安全JISC0508の最重要点として、安全を実現するには順番があるとしている。設計で安全を確保するのが第一であって、作業者の訓練で安全を確保するのは最後であると言う、安全の実現に階層的方法を提言している。日本では機械の設計では、機械そのものを安全に作るというよりは、機能とコストが重視され、作りやすくするため標準規格化に力点がおかれ、それに潜む潜在的リスク対策は使用者の役割となっている。従って、作業者の注意で安全を確保するところに重点がおかれてきた。安全は事故発生後の対処療法的チョコの手型対策と、外圧受動型による規則・規格化である。従って、世界認識から1〜2周回遅れ状態である。能動的に日本から安全規格を発信すべきである[001]。兎角、社会・工学的に不透明な安全問題に対して、安全規格の作成成果は相互間の共通言語となり、それに基づき評価が出来る大切なツールとなる。例えば機能安全/JISC0508に基づき安全レベルを評価する論文、報告書の例が陸上産業に限らず、海上部門・NAVにても発表されるようになってきた。着実に進歩している体系的な安全の技術と管理に関して、日本は世界標準を軽視しすぎである。海上部門の旧来の指導者・経験者・パイロット・船橋管理の思考は、人間に本来帰属するエラーの防止対策にたいしては教育訓練、人間の目の数を重視する安易な方法を選択し続けている。

[001]:日本規格協会、標準化と品質管理、2000-11月号、特集/機械安全の国内外の動向

・貿易障害回避の為、one stop certificationというシステムにより(協定化)、権威ある一機関の承認は全世界的にそのまま利用できるルールになっている。これにより社会の省力化(ムダの排除と効率化)を図ることが可能である。安全関連認証もその範囲にはいるとの当然の議論である。この国際認識が日本にても共通認識となると安全管理システムは民主導型となり、いろいろな面にて自主開発・努力の動きが加速されるであろう。

 

 

 

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