付4-5 安全性ランキングシステム
―安全性評価基準の設計(その運用計画を含む)における手法―
1) 背景
(1) いっこうに減らない大事故について国会の委員会答弁に於いて事務次官の発言は「ルールは最低限である。これをベースにて使用者の努力が必要」との表明があった。
(2) このことはルールだけでは社会進歩、ニーズに適合した安全が保てないことを示している。
(3) ルールは安全を担保し、安全についての規制は行政の原理主義的聖域と考えるなら、ルールを社会ニーズに適合させるため、行政は一層努力する必要義務がある。現状の規則のあり方が安全阻害の要因ともなっている。ルールの在り方は各側面で疲労しており、構造改革が必要であることは周知である。
(4) 船主の自主努力が推進しやすくする動機付けが求められる。このためにランキング(レーティング:格付け)システム導入とそれを正当に評価する体制が安全推進の一手段である。これは荷主が船舶選択責任を果たす上でのガイドラインとなる。現在のSOLAS証書保有だけでは安全性担保についての判断材料としての機能は明らかに不足している。有効な手段を出していないので相変わらず各方面にて事故が発生している。
英国では、1960年代、毎年1000人の労働災害による死者がでていた。そこで抜本的な対策をローベンスを委員長とする委員会で検討された。その答申であるいわゆる1972年のローベンス報告としての提言は「法規制による災害防止効果に限界が生じてきている。より効果的に機能する自主規制システムに切り替えていくべきで、そのため国は自主規制システムが効果的に実行されるための条件作りを行う役を担うべきである」ということである。
運輸行政に於いて安全機能不足の改善は出来ていない。海運安全部門は古い慣習を最優先として、時代に則した行政は閉塞状態にある。対応のスピードが重要な点である。
SOLAS証書は保有しているが、安かろう、管理の悪かろう船が常識として一般化し、経済的側面のみ評価されている。このような中で安全に関し人並みの発言をしておるのが得策であるという後進性が相変わらず海事世界では常識化している。社会が求めている安全確保を推進していくには、新技術の採用と経済的合理性にて判断する許容安全のあり方を取り入れることが肝要である。
(5) 規制緩和をすると船主は勝手な事をして事故が増加するという意見がある。ここには方法論を考えていない単純な発想である。相変わらず安全は法でコントロールできるという古い考えである。税金面におけるリスクヘッジである便宜置籍船は認めるとして、安全レベルの低下を意図にしたリスクヘッジ化の為の便宜置籍船は認めることは出来ない。環境等に重大な影響を及ぼす潜在リスクには、多重防御として各港湾を特別海域に指定して適切な運航が出来るように船舶に必要追加機能を求めるべきであろう。