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2) 許容できるリスク

とはISO12100-1(DIS)とJISC0508によれば、現今の社会の価値観に基づき受け入れられるとしている。システムに絶対安全は存在していない事は明白である。従い安全と表裏一体の許容リスクの研究・解明の並行努力は不可欠である。許容リスクは立場によりまったく異なる事は社会の環境問題の難しさからわかる。社会の価値観とは法的・規格的視点、技術的視点、社会統計的視点から受け入れられるか否かの判断に依存する。法的・規格的視点、技術的視点は米国でD.J.WADEにより提唱され、裁判の判決で1974年採用された「リスク―便益基準」がその後の判例に大きく影響を与えていることは注目される。同じことが日本にても「受忍限度内リスク」として相当する判例がある。社会統計的視点はOtway、Erdmannによる調査結果が、JISC0615第5部付属書(B)の表2に言及されている。また付属書(F)の[4]に引用されている英国の労働安全衛生庁(HSE)出版物「THE TORELABILITY OF RISK FROM NUCLEAR POWER STATIONS」には各種事故の社会統計調査結果が記述されている。「リスク―便益性基準」と同概念である「費用―便益評価」に基づき英国政府により1998年、提案される全ての規制に、規制影響評価(Regulatory Impact Assessment)を日常的に実施することを義務付けた。

 

3) リスクの許容判断についての影響因子4)5)6)参照

リスクの許容性判断に及ぼす要因として、各影響因子毎に重み付けを行い計算する手法に一対比較解析法(AHP)がある。最終目的(目標)、評価基準、比較対象からなる階層構造を作成して、主観的数量評価値(多人数のアンケート結果)に基づき重みを付与して四則計算により、意思決定するOR手法である。演繹法で解析できないときに使用されている簡易な算法である。

 

4) リスクの許容性判断例示

許容リスクの判断として発表されている例示は次のものがある

(1) 機能安全規格JISC0508第5部付属書A、A2に許容リスクについて次項等が記述されている。

― 適用にかかわる当事者同士の論議と合意

― 工業規格とガイドライン

― 国際的な議論と合意―国内外の規格の役割は、特定の適用に関する許容リスク基準に到達する為に、ますます重要になっている。

― 諮問機関による独立した産業的、専門的および科学的助言

― 法的要求事項― 一般および特定の適用に直接関連するもの

― 安全規制当局によるガイドライン

― 同類事項等と同等性・代替性(一般常識。ガイド51)

 

 

 

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