10) ヒューマンエラー
(1) 作業による分類
人間側と機械側の作業は、共通のものとお互いの作業を補完するものもあるが、機械と人間の主な役割分担は次のように考えられる。
・機械側:情報の収集と加工、操作命令の実行
・人間側:情報の理解、状況の判断、対策の選択、操作指示
ここで上の作業を1]知覚、2]判断、3]操作の3段階に分け、さらに過誤生起の原因として、a)主として人間側、b)人間側と機械側との接点(機械側が人間側に情報を渡す際/人間側が機械側に情報を渡す際)、c)主として機械側、に分類するとヒューマンエラーの対策が立てやすい。
機械側が人間側に情報を渡す際に発生するエラーの原因としては1]表示、音声が複雑で理解することが困難、2]表示などが小さい、判断しにくい、暗い。情報を受け取るまでの手順が複雑、3]情報をうけとることで疲労を招きやすい、4]情報をうけとる人間が不在か情報に気づかない、などがある。
人間側が機械側に情報を渡す際に発生するエラーの原因としては、1]操作手順が煩雑、2]調節が難しい、3]誤解しやすい手順、4]操作結果の表示がない、5]操作が受け付けられたか判らない、がある。
機械側を主とする原因によるエラーとしては、機械側の過誤を人間側が見過ごすことが主として問題となり、1]機械側の故障や異常の発生が人間側で分からない、2]表示内容が不正確、などがあり、その対策が必要である。
(2) 人間の行動による分類
ルールと知識ベースにおけるエラーは、エキスパート・システムなどを自動化システムに組み込むことでカバーできるが、良質のデータベースの作成が重要となる。また、スキル・ベースにおけるエラーは、手数が少なく、理解しやすく、間違いにくい、直感的、日常の行動パターンに反しないように設計されたインターフェースにより防止しなければならない。
(3) 人間側の原因による分類
人的過誤として次の原因がある
1]作業量過大、2]うっかり、注意の乗っ取り、3]短絡的行動、4]確率的誤りの発生、5]情報不足による誤った推定、6]人間の特性の時間的変化(疲労)、不安定など。
作業量と疲労は、その発生する条件が良く判っていて、作業の余裕を持たせるということで対策が立てられるエラーであり、対策としては、当直体制の中でも考えるべき問題である。作業に余裕をもたらす手段としてインターフェースを含めた機械側の支援機能を向上させることで考えるべきである。情報不足は支援の質と方法の問題である。うっかりや短絡的行動は、その発生予想が難しい。発生したときにインターフェースと自動化システムの機能に負うしかなく、機械側との冗長性という対処療法的な対策を取るしかないエラーである。エラーの発生の段階で防ぐことは難しいが、支援する機械が人間側の過ちを見出して、それを知らせ、修正するという方法で対策を立てることが望ましい。その機械の役目は安全性を保つために重要である。