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安全を推進する上に於いて、安全第一では説得力がない。安全は単なる目的ではなく、システムが有する価値の判断とその達成手法とその実現プロセスにおける努力(説明責任)にある。価値判断は効率性、快適性、便益性、経済性、環境性、技術力等いろいろのレベル状態である要素のトレードオフである。これらの内容・解析・判断には純粋な自然科学的手法だけでは到底対応不可能であり、不確実性を含んだ社会価値判断にかんする知識・アプローチが重要である。安全はシステム毎により異なり、それは技術と広い意味での情報より成立つ。それらは共に限界があり、その中から価値を見つけていく事になる。

 

8) システム安全性確保のための多層化

システム安全のための基本は、幾つかの防御過程を設けて事故の発生・拡大を防止する多層防御(深層防御)にある。この防御過程は一般に次の4層に分けることができる。

第1層:故障や誤判断・誤操作の発生を防止

第2層:危険状態の発生を防止

第3層:重大事故への波及を防止

第4層:事故の影響の拡大を防止

従って、システムの安全性が確保されるためには、システムが故障しないための高信頼化技術やエラーが発生してもその影響を防止すること、危険状態が発生しても事故拡大に至らない高安全化技術が必要である。

 

9) マン・マシン・インターフェース

船舶では、人間の知的作業を自動化システムで置き換えたりして機械側の能力を高めた結果、乗組員一名の役割の重要さが相対的に高まっている。このような人間・機械系では動作の信頼性を上げたり、人間側の過誤を検知してその対応策を取ることで安全性が確保できる。しかし、冗長系を構成するには人手が足りない小人数船では、その人的過誤(ヒューマンエラー)の影響を軽減し補完するためには、次のような手段を講じなければならない。

1) 人的過誤が発生し難い環境を作る。

2) 人的過誤が発生しても、機械側がそれを検知し、その対策を採れるようにする。

自動化船では、知能化のための自動化システムが機械側にあるので、人間側と機械側(自動化)との接点にあたるマン・マシン・インターフェース(ヒューマンインターフェース)を介してお互いに相手の機能と動作が良くわかること、および相手の過誤も直ちに判り、それに対処する正しい操作が出来る機能を備えることが大切である。このことは、機械側からも人間の思考と行動を見ることを要求しているが、プライバシーを侵さないことと、ストレスを掛けない程度に人間側の行動、例えば船橋での監視不在や居眠り、等の検知が必要となる。

 

 

 

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