従って、これらに設計的方策を立てておくべきである。
海難審判は管理システムのあり方にはあまり言及せず、とかく個人のエラー・失策に焦点を置いている。従って、審判による事故の潜在要因の同定には、社会ニーズに則した安全推進の管理、役割に対する深度が不足している。発表されているデータは統計としての母集団について言及されてないケースが見られる。統計の信頼性は母集団の同一性が基本であって、ここに客観性があるといえるようなレベルになる。超高度集積回路の信頼性評価を在来の部品類の信頼度のデータを元に議論しているようなレベルのものもある。システムに於ける安全の阻害要因ともならぬよう、思考における構造改革が求められる。
日本学術会議安全工学専門委員会にて、データの信頼性については事故発生原因追求の際、免責を与えてでもより正確なものを入手すべきであると提言している時勢である。データの信頼性には「システムの動作」と「人間とシステムとのインタラクション」の両方を記録できる航海レコーダー等の設置により、実記録の再生・解析が必要である。これにより関係者が同じ視点によって、実務に於ける透明性と説明責任性のある評価が出来、環境変化に対応できる管理体制・システムのリスクアセスメントが可能となる。ヒューマンエラーについての研究とマンマシンインタフェース設計における究極的解決法となり、安全推進に大きく貢献すると考える。
安全推進については次の設計中心とするプロセスが国際的に共通認識されている。即ち、ISO/IECガイド51、ISO12100、ISO14121、IEC61508等の安全基本規格に基づく共通概念導入が求められる。キーワードはライフサイクルとリスクアセスメントである。
第一として
STEP1 設計対応により安全を造り込む。各種エラーを回避する。
STEP2 残存リスクを反復設計により許容リスクまで低減する。
STEP3 設計対応できない部分は他の防御手段による。
STEP4 更に残存するリスクには人間の能力に依存する。
第二として事前予防・事後拡大防止の危機管理システム
第三として各社の管理システム
第四として規則の遵守
7) 安全へのオールドアプローチからニューアプローチへの転換
規則に対する整合性を基本とする決定論的安全評価は、ある条件のもとでの健全性や安全性を担保すること、また危険なことは発生しないという観点である。確率論的安全性評価は、結果として被害は発生するという観点で、その原因を探り、被害の発生を少しでも少なくしようとする考えであり、発生確率を算定する事の意義は発生確率の低さを根拠としてシステムを容認する。