4) 新技術への対応、人間の信頼性への対応限界
目標達成の手段において科学・工学・思想等の新しい成果の利用にはメリットとデメリットがある。それらをよく評価しておくことが肝要である。人間、機械〔システム〕、環境・社会情勢の変化を充分点検し、新技術に適切に対応し、時代に相応した安全対策を実施する。過去の設計に於いては人間と環境等の問題は曖昧であり、それらへの対応は使用者側が一義的に役目を果たすものと期待されてきた。
陸上、海上に於ける大災害の反省から、人間への教育・訓練の限界を自覚して、各種エラーは設計段階にて最新技術と反復設計により対応して初めて安全構造的システムと考えられる。このプロセスがなくては、事故がおきていないから安全なシステムであると言う論理は成り立たない。
5) 人間中心の自動化
技術中心の自動化から人間中心の自動化の時代となってきた。これは言うのは易しいが設計者には容易ではない。過去の教育・工学・科学は物理数学的な・結果現象面のみの観測に依存していたが、これでは新しい人的因子に起因するリスク対応には充分ではない。このため人間の行動、環境の変化等を予想していくためには広い知見・洞察が必要である。顧客満足(CS)のため、人間と機械の接点である使い易い/ユーザビリティー性のあるヒューマンインタフェース設計を重視する時代となっている。この認識にたってISO13407/HUMAN-CENTERED DESIGN PROCESSES FOR INTERACTIVE SYSTEMSが成立し、第三者による認証登録制度導入がなされ、JISにおいては国際統一規格として発行した。これは安全を帰納的、構造的規則にて括えるだけでは不十分であるとの考えている。日本においては安全文化は輸入物であり、積極的対応プランとその評価手法が遅れている。
6) ヒューマンエラーとその影響回避の視点と方法
ヒューマンエラーが少なければシステムのパフォーマンスが高いが、エラーの影響回避にも目を向けるべきである。従って、熟練者の高い能力はエラーを限りなくゼロに近づけられると言う形で実現するのではなく、エラーを犯した場合に的確に検出し回復操作を実施するという形で作業を遂行する。この知見は人間の資源制約下における問題解決モデルに基本的なインパクトを及ぼすものであり、マンマシンインタフェース設計と教育訓練のあり方に新しい視点を与える。問題解決においてこの考え方は人間的、現実的、且つ自然なものである。
責任追及段階において、事故に至る課程の最後は当直者であり、「判断は正しかったか、適切であったか。状況を正しく認知していなかったからだ」という紋切り的結論となっている。状況認識喪失は(1)何がおこっているかに気付くこと、(2)その原因にきずくこと、(3)これからの事態の推移が予想できることへの欠如に起因する。