3) 危険事象の解析(Risk Assessment)
解析においては、過去の事故例を活用して各因子(例えばレーダーの性能・故障)の危険事象(例えば衝突)に対する寄与度合いを樹木型表示(Risk Contribution Tree)を用いて示す。TreeはEvent Tree、Fault Tree、Regulatory Impact Diagramなどを適宜問題に応じて使用する。
事故シナリオの重要度を階級などにより表示することも肝要である。Delphi法などを用いた専門家判断も活用して、結果の重大さと生起確率を行列表示するRisk Matrixも有用な手段である。
4) 危険事象の制御オプション(Risk Control Option)
解析した危険事象に対し、影響の大きな因子に改良を加えた場合、その改良度合いにより、危険事象の発生確率がどの程度改善されるかを解析すステップである。(RCO)
危険事象解析における寄与度合いの樹木表示(Risk Contribution Tree)が活用される。RCOは例えばタンカーの油汚染では、外部からの船舶の運航などの管理、船上での緊急時対策や船の漂流度数の減少など各方面から多角的に考慮する。
5) 費用対効果(Cost Benefit Assessment)
危険事象の制御オプションにおいて求めた因子の改良に要した費用と、それによる危険の減少の比を指標として用いる。危険性は人命・環境・財産と多岐に渡るため、厳密な費用への換算は難問である。また費用の負担者と享受者の関係もある。
6) 結論策定のための勧告(Recommendations for Decision Making)
以上の検討を総合して、勧告として文書化する。各種オプションや従来の方法および他の機種や船種の事故率などを客観的に評価できるように配慮する。事故の重要度(例えば人命損失)(Fatality)と頻度(Number)の関係を表すF-N線図などが用いられる。
7) 検討状況
(1) Interim Guidelines for the Application of Formal Safety Assessment (MSC Circ. 829)の発行に前後して、Ro-ro船のHelicopter Landing Area (NV-97-2053)、高速艇(IMODE41/INF7)、Bulk Carrier (MSC70 Informal)、環境インデックス(MEPC42/17)などの試行が欧州で行われている。
日本では、日本造船研究協会RR42(平成7-11年度)に引続きRR49(平成11年--)において、国土交通省の海事局安全評価室の指導で、内航船を主体に多角的な検討が行われている。