6) 規格のあり方の改善
規格・規則は最低限必要なレベルではあるとの発言がよく聞かれる。この根拠・視点は何であろうか。規格類の内容が構造要件から成り立っているからであると指摘されて久しい。安全なシステムにすればコストがかかり、かつ技術的に不可能な場合もあるので、賛意が得られる程度の最低限レベルが製品の規格として成立していることは大なり小なり事実である。一律の構造的規格・規則は確かに製造者には造りやすく便益は大きいが、反面危険な残存リスクが環境に応じて発生しうる。90%程度を占めると言われるヒューマンエラーに起因する事故原因は、このままの規格類のあり方では引き続き存続する事になると考えられる。
特定のシステムにおいては従来型の構造規格と機能・ユーザビリティー性の規格が必要であるとの視点に変化して、人間中心を目指した規格とそれらの統合化が図られつつある。
規格の便益性(メリット)と潜在リスク(デメリット)との比較再評価を実施して、ヒューマンエラーの影響拡大防止のための指向が必要であろう。
安全・環境部門は社会的対応として、階層的には諸技術的部会等より上位に設定するべきである。社会責任に大きく係わる規格作成団体は、規格内容と議論プロセスの透明化が必要なこれからの時代においては、整合性、合理性と迅速性において諸問題に適切に対応できることが必要である。
ISO・IEC等の規格は階層化されている。規格作成時に迅速に整合性を取れるようにシステム化している。最上位の概念の下に、基本安全規格、グループ規格、個別規格がある。日本は基本的には大部分が個別規格のみである。国際規格も未だその面が多々あるが、これから見直しがなされていくであろう。
ヒューマンファクターが事故に占める割合が極めて大きい海事部門のJIS Fは、早急に総合的な国際安全規格にあわせて安全概念を上位におき、一元管理により既存の各部門・機器規格を見直していかないと、部門の判断により、バラツキが大きくなる可能性は否定できない。
今までは事故は使用者の責任という観点で大部分捉えられていたので問題は少なかった。各種議論とその議事内容の結論の良し悪しは別に評価するとして、後日の外部からの評価に耐えられることができるシステムにしていく事が必要である。これからは、前記した各項目を考慮して、事故低減達成となる積極性を持った機能・ガイド規格を作成することが必要である。
規格は、妥当性あるリスクアセスメントに基づき、製造者、使用者及び第三者の透明性ある合意に基づくべきである。