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Accountabilityとシステムの安全の観点で、社会ニーズの変化に対応できる設計プロセスの確立が極めて大切である。この観点から実務的方法を例示していきたい。

 

3) 許容安全概念の普及

安全は、納得できる危険性を許す許容安全として考えるべきものである。日本においてはこの種の議論は極めて限られており、欧米と比較して遅れている。したがって、事故が発生した場合、意見がかみ合っていない場合が多い。これは日本における安全の定義が『絶対に安全』という概念にまで言及しているため、現実的な判断と食い違うためであるとされている。

許容を定める要因は多種ある。その代表的なものとして「リスク便益性基準」「社会合意である規格」「規則」「文化」「時代性」「永続する社会・環境」等がある。電気、電子関連の国際規格IEC 61508を翻訳したJIS C 0508の附属書によれば許容安全の諸要因の一つとして「工業規格とそのガイドライン」にも言及している。許容安全・安心はいわゆる危険性の把握・認知・広報段階における透明性と信頼性が大きなウエイトを占めている。

これらの問題点を整理して、海事世界と一般社会通念との整合性を図って行かないと、海事世界の後進性が問われることになる。

運航において、安全性を全て乗組員の資質にのみ依存するのではなく、総合的管理により運航の安全を捉える時代になっている。

積極的・継続的な許容安全についての取り組み、時代に応じた意見統一は、海事世界に対する一般社会からの信頼性醸成のために必要な事である。

 

4) ランキングシステムの具体化

安全のレベルは対象とする製品の便利さ、使用者、影響を受ける者、及び環境や経済への影響等に応じて多段階である。この多段階を合理的にランキング化する必要がある。

規則の構造寸法を与えるような記述的規制のみでは、安全性は担保できない。安全を確保する方策として製造や運航の関係者が自主的に安全を推進しやすい動機付けが必要である。規則は、製造や運航者の自主的努力を推進するような全体的な機能要件を重視したものにすべきである。いくつかの現状には、経済的妥当性があるとの認識により、安全を阻害するものもある。自主努力推進のための手段の一つは、各社の安全推進度合いを外部から評価できるシステムの構築である。この手法は最近のISOによく利用されて、欧米社会ではこのシステムを努力指向の表明策として受け入れている。安全におけるランキングシステムの詳細化とその認証の為の組織作りの提言が日本においても必要であると考える。

安全性評価と認証団体の存在とその展開の動きが見られるので注視していく必要がある。

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5) プログラマブル電子系の安全

コンピュータを用いたプログラマブル電子系(Programmable Electronic System; PES)は電気リレーを用いた安全装置のみならず、あらゆる装置類に使用されている。製品に関係する安全を考える際に、PESに対する配慮は欠かせないものである。それは、プログラム ソフトのみならずそれを用いて駆動される装置の作動とも十分に関連したものでなければならない。付4-8で詳細に述べるように、IEC 61508及びそれを翻訳したJIS C 0508では、ライフサイクルを配慮したPESの安全を規定している。本調査で提案するガイドライン規格に於いてもPESは十分に考慮しなければならない。

 

 

 

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