当世高齢事情 NO.22
公証人 清水勇男
旅の衣を整えよ
最近、とてもきめ細やかな遺言をした人がいます。
60歳を少し過ぎたばかりの独身のその男性は、自分の葬儀・納骨・法要、それに家の後片付けなどをしてもらうため、NPO(非営利団体)A法人に加盟している登録事業者Bとの間で死後事務の委託契約を結んだ。契約金額は170万円。そのお金を、Aに遺贈し、AはBが契約どおりに死後事務をしてくれたことを見届けた上で、Bにその金額を渡してもらいたいという遺言執行委託契約をAとの間で結んだ。こうしておけば、Bは契約どおり履行しないとお金がもらえないので、きちんと約束を果たすことになる。何らかの理由でBに契約を履行できない事情が発生したときは、Aは、他の登録事業者にBとの委託契約を引き継がせることになる。
この170万円は、依頼者が自分の預金口座に入れておき、自分が死亡したらその預金をAに遺贈するというシステムになっている。預金ではなく、生命保険金でもよい。受取人をAにしておいて、自分が死亡したらその保険金をAに遺贈するとしておくのである。受取人を親族以外の第三者とする生命保険契約も、Aの信用から可能になっている。
こうしてAに預金170万円を遺贈するという遺言公正証書が作成されました。
それ以外の財産をどうするのかは遺言者の自由です。遺言しておかなければ法定相続どおりになり、相続人がいなければ最終的に国庫に帰属する、つまり国のものになります。