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県内最低の保険料

国保診療所を中心に在宅ケアに取り組む村

福井県名田庄村

 

これに対し、同じ福井県でも名田庄村の施設入所者は認定者八五人に対してわずか七人。施設入所率は県内最低で、介護保険料は二五〇〇円とこれも県内最低である。

村に入所できる施設はなく、施設介護が必要な高齢者は、名田庄村と隣接する小浜市、上中町の三自治体で運営する公立小浜病院に併設された老人保健施設に入所している。村にあるのは国保直診の名田庄診療所だけ。在宅医療中心の無床診療所で、僻地医療では異例の二人の医師が常勤し、二四時間体制で対応している。「名田庄は特別養護老人ホームがないから保険料が安いんだろうと言われることが多いが、そうではなくて在宅医療、在宅ケアに力を入れてきた結果です。名田庄は国保の一人当たりの医療費も県内で最も安いんです」と言うのは、名田庄診療所長の中村伸一医師だ。自治医大を卒業後、福井県立病院を経て名田庄診療所に赴任した中村医師は、二つのことに取り組んできた。

一つはがんの早期発見で、そのために誕生月の胃カメラ検診を実施した。二つ目は終末期の在宅医療。自宅で安心して最期を迎えることができるのは、患者や高齢者にとって最も幸せなこと。中村医師ががんの早期発見に努めるのは、そういう実績が患者の信頼につながり、終末医療を村の診療所に委ねてくれるようになると考えたからだ。果たして、現在、村民の九割が自宅で最期を迎える。

名田庄村は福井県の最西南端に位置し、京都府と滋賀県に接する山間地で、村域の九六%は山林。わずかな平地に家を建て、老後は家族が看るという昔ながらの生活を続けてきたが、この村も過疎化が進み、高齢化率は二七・五%。独居の高齢者や老夫婦のみの世帯も増えた。

 

 

 

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