「わが町も介護保険をきっかけに、在宅で行えるものは在宅へ切り替えるよう福祉計画を見直しつつある」(堂埜さん)のが現状だ。介護保険が始まって三か月で認定者は一九〇人から二一八人に増えたが、施設入所者は四人増に留まっている。こんなところにも大子町とは違うもう一つの介護保険制度が与えた影響が見てとれる。これからは在宅サービスで対応しようという姿勢が町にも住民にも芽生えつつあるようだ。
「本音のところでは、年寄りだって施設より住み慣れた自分の家が一番いいんです」と堂埜さん。実母を老人保健施設から引き取り自宅で看取った自身の経験からそう痛感したという堂埜さんは、昨秋、町長を代表者にして「越前ユー・アイネット」を立ち上げ、ユニークな「居宅ヘルパー」の募集を始めた。お年寄りと同居して家事援助や介護、送迎などを行うヘルパーで、越前町に地縁・血縁のある人を求めている。密着度の高いホームヘルプだけに互いの相性と合意が大前提で、報酬は当事者間の話し合いで決めてもらう。ただし、報酬額が極端に低い場合などは、町の福祉予算から支援する考えもある。在宅で介護を受けたいという人に、こういう方法もあると選択肢を増やすのが狙いで、「越前町に縁のある人なら、お年寄りの抵抗感も和らぐはず」と、堂埜さんは心の通う居宅ヘルパーに期待を寄せている。
居宅ヘルパーシステムは、見方を広げればさわやか福祉財団が進めているふれあい型グループホームにもつながるもの。単に身体の世話をするというだけでなく、共に暮らすことでお年寄りに心の充足も与えることが可能となる。“私、世話する人。あなたは世話される人”という一方通行でないシステムになれば在宅介護の満足度も増すはずで、ぜひ良いシステムになるよう期待したい。