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福井県の高齢化率は一九・九%。全国平均を四ポイント上回る同県は、特別養護老人ホームや老人保健施設などの施設整備率の高さでは全国で三番目にランクされている。その恩恵に浴して最も施設入所率が高いのが越前町だ。

介護保険開始時の越前町の要介護認定者は一九〇人で、このうち一二三人が施設に入所している。施設入所率は六五%に及ぶ。その結果、越前町の保険料の月額基準額は四〇〇〇円で県内最高となった。この高い施設入所率の背景にあるのが過去二〇年余り続いてきた施設に頼る介護で、前述の大子町とはまさに対照的。保険料も二倍半強となっている。

越前町は日本海の海岸線に沿って南北に伸びる細長い町で、切り立った断崖が海にせり出し、海岸線まで山が迫る。越前ガニが獲れる漁業の町は年々過疎化し、長男も都会に出たきり帰らない。日本海の荒波が打ち寄せる冬場の生活も厳しい。

「そういう所ですからね、状態が悪くなると『施設に入らんといけんよ』ということになる。隣近所が開けっぴろげで暮らす漁師町は、お節介な人が多くて周りが放っておかないんです。年寄りのほうも、施設に入れば自分も安心だし、家族にも負担がかからないだろうと割と気軽に施設を利用してきた」と、住民福祉課長の堂埜孝治さん(右写真)はこの町の地域性を説明する。一九九六年には日本海を見下ろす高台に特別養護老人ホーム「海楽園」ができ、施設充足率が一〇〇%の中で、ここだけは入所待ちが出るほど人気が高い。しかし、高齢化がさらに進めば施設入所で介護をまかなうにも限界がある。

 

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越前町へ。日本海に面して南北に伸びる。

 

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