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さて、大子町の介護保険事業は実際にフタを開けてみると、認定申請は当初見込みの五〇七人を大きく上回る七三〇件を数え、そのうち認定者は五九九人になった(二〇〇〇年一〇月現在)。うち一三九人は町内にある特別養護老人ホームと老人保健施設に入所し、それ以外の在宅サービスの利用率は七五%で、一人が複数のサービスを組み合わせて利用する傾向が強いという。

当初見積もりとの誤差は「保険料も払っていることだし、取りあえず申請してみようと介護保険の理解が進んできた結果ではないか」(藤田さん)。事実、役場の窓口に母親の認定申請に来た五〇代の男性は「これまでは家族で看てきたけれど、私ら家族も年寄り自身も保険料を払うようになったんだから、サービスを利用するのは当たり前のことだと思えるようになった」と話す。家族介護に頼ってきたこれほどの保守的な風土でも、介護保険の登場によって新しい風が吹き始めたようだ。今後大子町の保険料がどう変わっていくのかも興味のあるところ。仮に三年後の見直しで保険料がアップすることになっても、それは介護の手が家族から公的サービスへと移行することを地域が選んだことにもなるのだから、意味ある誤算だったともいえる。風はまだ微風だが、今後この町の人たちはどんな選択をしていくのだろうか。

 

同じ県で保険料がこんなに違う!

福井県の場合

 

県内最高の保険料

施設入所者が六五%を占める町

福井県越前町

 

一般的に要介護高齢者のうち施設入所者が多いと保険料は高くなり、反対に少ないと保険料は低く抑えられる。このことを如実に証明しているのが福井県の越前町と名田庄村である。

 

 

 

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