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大子町は茨城県の北部、久慈川の源流が町を縦断する山あいの町だ。町域は県下一広く、人口二万四五八三人の町に七四二〇人の高齢者が住む(二〇〇〇年九月現在)。高齢化率はすでに三〇・四%で、とりわけ後期高齢化率は四〇%を超えている。

長男が家を継ぎ、あとの子供たちは家を離れて水戸や首都圏で暮らすという伝統的な家族制度が今も残る大子町は、「介護は家族で」の考え方が色濃い土地柄だ。「ホームヘルパーが家に入ることにも抵抗があるんです。嫁は何してるんだと言われてしまう。だから、家に社会福祉協議会や“久慈川荘”のクルマは来てくれるな、と」と特別養護老人ホーム「久慈川荘」施設長の田口正さんは苦笑するが、それほど家族介護に頼ってきた。

そうした風土を反映してか、九八年に実施した高齢者実態調査の結果は、福祉サービスを利用している人も、「将来、利用したい」と答えた人も極めて少なかった。町はこの調査結果を基礎に保険料を算定、見込んだ介護保険サービス利用者は五〇七人である。月額の基準額一五三三円はこうしてはじき出された。

サービス利用者が少ないもう一つの理由として、藤田さんは「働ける間は働いて、余暇には老人クラブでスポーツを楽しむ元気な高齢者が多いこと」を挙げる。現に大子町の六五歳以上の就労比率は一八・四%で、茨城県平均の七・二%を大きく上回る。国保の受診状況を見ても、大子町の高齢者一人当たりの年間受診費用は県平均より一〇万円余り低く、元気なお年寄りが多いことを裏付ける。秋のスポーツ大会には老人クラブ単位に五〇〇人が集まり、ゲートボールなど五種目の競技に汗を流したという。

 

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