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施設側からは次のような要望が出た。入所者は急速に高齢化しており、車イス利用者が増えている。入所者に「今一番してほしい事は」と尋ねると「外出」という答えが一番多いという。しかし、車イス利用者の外出は基本的にはマンツーマンであり、今の職員配置からでは無理。ついては、入所者が一番望んでいる外出を定期的に手伝っていただけないか、というものであった。

活動は再開された。月に1回、10人程度の組合員が「あいふるの里」に集合。お年寄りを車イスに乗せるなどの準備を整えた後、1時間から1時間半ほど外へ出て昼ごろ帰る。今までで一番多く行った所はスーパーマーケットだ。車イスを押しながら、菓子など好きなものをかごに入れるお手伝いをした。取材でお会いした渥美良夫さん(元書記長)も近所の真清田(ますみだ)神社にお参りに行った。「玉砂利の上を車イスを押すのは結構大変ですよ。車イスを持ち上げて拝殿のまん前まで行った時は、こんな近くまで来たのは初めてだ、と感謝されました」「こないだはありがとう、また来てね、という声を掛けられることもありますよ」と満足そうだ。ぶどう狩り、映画まつり、ドライブ、餅つきなど楽しい催しが今後も計画されている。「厳しい経済環境下、組合員も減ってきていますし、いろいろな批判も出ており、労働組合がボランティア活動を続けていくことは大変です。しかし、ボランティアに興味のある人は多くはないがいることは確かです。その人たちのためにも組合として道を敷いておかないと」と渥美さんは組合の強いリーダーシップに期待していた。

(取材・文/三上彬)

 

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