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昨年夏、財団内所定会議で堀田力理事長が次のように語った。

「NPO優遇税制について、“所得控除容認へ”など楽観論が新聞で報じられているが、これは非常に危険。認めはするけれども、対象をやたら厳しくして実際はほんの一握りのNPOしかこの措置を受けられない可能性が高い。それでは従来の特増法人*と同じで何の意味もない。これを何とか阻止しなければ」と危機感を伝えた。

 

* 「特定公益増進法人」のこと。この認定を受けた法人に寄付を行った場合、寄付者は寄付控除などの税制優遇措置が受けられる。現在34の類型があるが、ボランティア活動の推進にかかわる活動は類型に入っていない。)

 

ここで、NPO法についてのこれまでを簡単に振り返ってみよう。

特定非営利活動促進法(通称NPO法)が成立したのは一九九八年の三月。阪神・淡路大震災などで活発になったボランティア・市民活動の一層の促進を目指して生まれたもので、同年十二月一日から施行された。この法律により、草の根団体にも法人格取得の道が開かれ、ある一定の要件の下に「NPO法人」として活動することが可能となった。

しかしまさに生みの苦しみというべきか、この法律を作る過程では政党間はもちろん、市民団体同士でさえ時に意見が対立し、その都度修正が加わり、数年という時間がかかったのである。

さわやか福祉財団ではこの間、強力なロビー活動を展開してきた。理念を共有する外部団体とネットワークを組んで、「まずは法律を誕生させることが第一」と国会議員などにアピール。そしてようやく九八年にNPO法が世に出たのである。法人格取得により、従来は代表者などの個人名でしか行えなかった事務所賃貸や電話・銀行などの各種契約も晴れて団体として行えるようになり、活動の基盤づくりが進んだ。それから二年、二〇〇〇年十一月現在でおよそ三〇〇〇の団体がNPO法人として全国で活動している。

 

待ったなしの期限

 

では今、何が問題なのか? 実はNPO法成立の過程で、強く市民団体側が訴えていたもう一つの柱、「税制優遇措置」が見送られていた。「法施行後二年以内に検討を加え、三年以内に必要な措置が講ぜられるものとする」という法律の附則および附帯決議にとどまっていたのである。

 

 

 

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