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座長には貝塚啓明教授が就任し、二〇〇〇年一月に第一回会合を開催。以後九月まで計一〇回、ほぼ月に一回約二時間のペースで官邸で行われた。そして昨年一〇月二四日、それまでの会合の論議を踏まえて最終報告書「二一世紀に向けての社会保障」が発表された。さて、この報告書は私たちにどんな未来図を示したのだろうか?

 

◆高齢者も応分負担を

まず今回の特徴として挙げられるのが、「高齢者も能力に応じて負担を分かち合う」と、“高齢者一律弱者”の考え方を方向転換したことだ。経済的能力に応じた負担をすべきだと提言している。

高齢者の応分負担としては、実質非課税となっている高齢者の年金(公的年金等支払金額の合計三四兆三〇〇〇億円のうち、課税対象は二兆三〇〇〇億円)にも今後適正な課税を行うことの必要性も示唆した。

 

◆財源は社会保険方式で

「税方式」か「社会保険方式」かでたびたび議論となる財源問題では、「制度への貢献に応じて給付が行われる社会保険方式を主とするのがふさわしい」と現行路線を肯定した。

 

◆世帯から個人へ

世帯単位で維持されてきた年金制度は、女性の社会進出を踏まえ、個人単位への移行など必要に応じて見直しを行うべきだとまとめている。

 

さて、翌二五日の新聞各紙は一斉にこれらの内容を報じている。論評としては、「高齢者も応分負担提言・具体策は触れず」(日本経済新聞)、「安心実現へ国民合意訴え・財源問題再燃も」(読売新聞)など、総じてある一定の方向を確認したことは評価しながらも総論にとどまった感のある内容に「力不足」だと論じている。

委員として参加した堀田理事長は「長期・包括的ビジョンなく40点」と辛口のコメントを出した。

 

「高齢者の応分負担や社会保険方式の確認などは、基本的な方向として評価できる。しかし、目指す社会保障の長期的・包括的なビジョンを何ら具体的に示すことができなかったのは大変不満。今の異常な人口構成は恐らく一回切りの非常事態であり、現役世代の負担を減らすためにも、国有財産の一時投入などの特別措置を検討すべきなのに一切言及がなかった。あとは政治がいかに腹を決めるかだ」(堀田力)

 

 

 

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