堀田 日本の二一世紀を考えてみますと大きな問題が社会の高齢化です。こちらも人類史上例を見ない人口構造となって、対応する社会の仕組みづくりが急務となっています。まずその一つとして公的介護保険制度がスタートしましたが、どうご覧になっていますか。
石川 私は、政府はそれなりによくやっていると思っていますが、どうも十分というわけにはいかないようですね。国の財政を見てもこの保険に使う費用はかなりの額だけれども、それでもまだ足りない部分がある。私自身がそのご厄介になっているのでよくわかるんですが、この制度で確かに生物的な安心は七割くらい満たされるところに来たと思っています。でも実際は残りの三割が結構大変なんじゃないか。我々の年代では「自分でやらなければいけない」と思っている人も多いですから、今は恐らくそれで賄えている部分も多いでしょう。でも将来的にはこれでも足りないとなると、いったいどう解決していけばいいのかということです。
堀田 ご指摘の通り、そもそもこの制度だけで国民一人ひとりが完全に満足して安心する老後を過ごせるというのは無理だと思うのです。介護保険制度については自治体でも八割から九割の方が肯定しているという調査結果があります。もちろん始まったばかりですから細かい問題は山ほどありますが、あと十年頑張れば最低限度の安心までは何とか確保できるのではないか。ただしあくまでも身体の安心という意味であって、人間らしい、尊厳のある豊かな老後の保障は介護保険だけでは不可能なんですね。